第11話 ギャルとイチャイチャ×2


 サラダを出してギャルたちを黙らせることに成功した俺は、再び料理に手をつける。


「ちょ、乃絵留……私ばっかサラダ食べてんじゃん」

「野菜……イヤ」

「ガキかよ。ほんと乃絵留は」


 料理をしながら仲良さそうにしてる二人を見てると、不思議と和んだ。


 人見香奈も性格キツめの金髪ギャルかと思っていたが、雪川といる時は意外と面倒見が良いというか。


「ん? ちょい転校生、なにこっち見てんの」

「あ、いや、なんでも……」

「……はぁ」


 俺がチラチラと見ていたら、人見が睨んできて、小さくため息をつくと立ち上がった。


 な、なんだなんだ……。


「あんたさ、手伝って欲しいならちゃんと言えし」

「え? え?」


 人見はシャツの袖をたくし上げると、手を洗ってから食材たちに手を伸ばした。


「手伝ってくれるのか?」

「じゃあなに? さっきこっち見てたのは私たちのパンチラ期待してたとか?」

「ちがっ……て、手伝って欲しいと思ってました!」

「はぁ。ほんと、これだから陰キャは嫌い」


 と、言いつつも俺の料理を手伝ってくれるらしい人見香奈。


 オタクに優しいギャル……というよりも、シンプルに面倒見の良いギャルと言ったところか。


「ねえ香奈……わたしもお手伝い」

「乃絵留はテレビ観てて。包丁振り回しそうだし」


 怖っ。

 いくら雪川でもそんなことしないだろ普通。


「あ? 何これ。あんた料理を振る舞うとか言う割には、コックパットのレシピ丸パクリじゃん」

「だから別に俺は特別な腕とか持ってないんだよ。雪川が持ち上げすぎなだけで」

「なるほど。それなら尚更……乃絵留はあんたのこと気に入ってんだね」

「え?」


 雪川が、俺のことを気に入っている……?


「あの子さ、滅多に男子に話しかけないし、逆に話しかけられても無視だし」

「それはまぁ、そうみたいだな」

「でも……あんたが転校してきた日。あの子、やけにあんたのこと心配しててさ。友達がいなかった頃の自分と似てる〜とかなんとか」

「昔の雪川と……俺が、似てる?」

「まぁ乃絵留は変に無口で天然なところがあるけど、本当は優しいからさ。シンプルにあんたのこと心配してたんだと思う」


 そっか……ああ見えて雪川は、俺のこと気にかけてくれてたのか?


 確かにあのスーパーでばったり会った時、話しかけて来たのは意外だった。

 普段からギャルグループの面々としか話さない雪川が、自分から声をかけてきたんだもんな。


 普通、おっぱいをガン見してきた相手に自分から話しかけたりはしない。


「つーかあんた、乃絵留と仲良い割には春原とも毎日話してんじゃん。色々と大丈夫?」

「大丈夫って?」

「いやだって、優等生どものトップにいる春原とも仲良くて、あたしらの乃絵留とも仲良いとか……あんた二つの勢力に挟まれて、そのまま破滅するんじゃないの?」

「もしかして、人見も心配してくれてんのか?」

「してねえから。勘違いすんな陰キャ」


 人見はそう言って、唐突に料理の中へ、ケチャップをドバッと入れてきた。


「あ、おいっ! ホワイトシチューになんてもん入れてんだ!」

「いいじゃん。ケチャップはなんでも合うし」

「ケチャラーかお前は!」

「もち。ケチャラーだし。白米にもケチャップかけるし」

「それはただのケチャップライスだろうが。マヨラーの怪奇さには負けてるぞ」

「はぁ? ちょいケチャラーの前でマヨラーの話すんのやめろし」


 俺と人見の間で謎の睨み合いが始まる。

 すると、仲介に入ろうとしてか、雪川がとてとてと近づいてきた。


「なんか二人……いちゃついてる」


「「いちゃついてない!」」

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