第12話 ギャルに食わせる最高の料理
意外と世話焼き(?)な金髪ギャルの人見香奈の手伝いも多少はありつつ、晩飯の準備は進んでいった。
米が炊けるまであと20分ほど。
できればそれまでに他の料理を終わらせないとな。
最初はホワイトシチューを作る予定だったが、どこぞのギャルの妨害もあり、せっかくのシチューが血の海と化したので、急遽シチューは"オーロラスープ"にすることを決めた。
さっきまで作っていたホワイトシチューの中へ、手頃なサイズのトマトを小さく刻んでから追加して、さらに煮込んで具をトロトロにすることで、赤くても違和感のないトマト入りのオーロラシチューが完成。
「これでスープはいいとして、あとは主菜だな」
ちなみに雪川がスーパーで買ってきた食材は、申し訳程度の野菜と、あとは割引シールが貼られた豚ロースばかり。
自分から言わないものの、暗に雪川から「肉料理を作れ」と言われているようなものだ。
俺はちゃぶ台の方で人見と話す雪川の方を見る。
飯を節約してる割に、雪川の胸が異様にデカいのは、しっかり肉を食べているからなのだろうか……。
そんな邪なことを考えながらも俺は手を動かす。
手軽にちょっと「オシャレな肉料理」をするなら、"アレ"が一番だよな。
俺は慣れた手つきで豚ロースに薄力粉を塗して、溶き卵と粉チーズを混ぜ合わせた卵液に一枚一枚しっかり潜らせてから、フライパンでしっかりと焼く。
その合間に少し甘く味付けしたにんじんのソテーを作り、ついでにブロッコリーも用意する。
こうして、黄、赤、緑の鮮やかな色合いが一つの皿に集まった。
「よし、ピカタプレートの完成だ」
豚肉のピカタ、にんじんのソテー、ブロッコリーの3つが集合したピカタプレート。
ピカタもスープもイタリアンで、白米にも合う『和イタリアン』とでも言ったところか。
そうこうしているうちに、米が炊けた音が鳴った。
「おーい二人とも、料理できたぞ」
俺がそう言うと、人見と雪川は立ち上がって、キッチンまで来た。
「へぇ。転校生って見かけに寄らず普通にメシ作れるじゃん」
「なんだよその失礼すぎる感想は」
「……梶本、遅いわ。わたしはお腹ぺこぺこ」
「何の手伝いもしてないお前には言われたくないんだが」
「今回の料理の食材はわたし持ち……つまりわたしがオーナー」
「作ってるのは俺なんだから持ちつ持たれつだろ」
「そ、それは……」
「文句あるならもう作らないぞ」
「ぐっ……」
雪川はオーバーなくらい顔を顰める。
いつもの平然とした顔は何処へ……。
「あ……あなた、無駄にレスバ強い」
「どこがだよ」
その後も二人から何かと文句を言われながらも、ちゃぶ台を3人で囲んで晩飯を食べることに。
「お、美味しい……! ピカタの肉も程よい柔らかさで、しっかり食べ応えもあるし、スープもただのトマトスープじゃなくて、市販のシチューを入れることでとろみと味わいが何段階もアップしてる。梶本の料理……なんでこんなに美味しいの……?」
「リアクションがオーバーすぎるだろ。これ、ただのピカタとスープだぞ」
「どう香奈? 梶本の料理、美味しいよ」
「……いやまぁ……普通に美味いっつうか」
俺が料理のレシピをコックパッドから持って来てることを知ってる人見は、それもあってかそこそこのリアクションだった。
まぁ、これが普通の人のリアクションだよな。
雪川は俺の料理の腕を買い被りすぎだ。
俺がそんなことを考えながら、自分のメシを食べようとしていると、なぜか隣の人見が、耳を貸すようにジェスチャーしてくる。
俺は仕方なくそれに応じて耳を傾けた。
「あ、あんたさ……普通に料理、美味くね? コックパッドの通りとはいえ、普通に店とかで食べてるくらい、違和感ないっつうか、素朴というか……私が邪魔したこのスープも、クッッソ美味くなってるし」
「あのな……お前まで雪川の謎ノリに付き合うなよ。てか、そういうのはコックパッドに言ってやってくれ」
「いや、今はそういうんじゃなくて……はぁ、まぁいいや。どうせあんた陰キャだし、自己主張するのとか向いてないよね」
よ、よく分からないが、かなり馬鹿にされてることだけは分かる。
「ねえ梶本」
俺と人見がコソコソ話していたら、雪川が俺に話しかけてきた。
「な、なんだよ雪川? ご飯のおかわりなら自分でつけてこいよ」
「そうじゃない……もうご飯のおかわりは貰ったから」
違う……? って、おかわりはもう貰ってんのかい。
「梶本も……良かったらわたしたちのグループで、一緒に行動しない?」
「え……お、俺が、ギャルと!?」
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