第10話 ギャルとサラダボウル
東京からこっちに引っ越してきて2週間。
まさか……こんなことになるなんて。
俺の部屋の中央には、金髪と銀髪の見るからに派手なギャル二人組が座っている。
ギャルグループの二大巨頭ともいえる人見香奈と雪川乃絵留。
人見はあぐらをかいて座り込み、雪川は女の子座りでぺたんとちゃぶ台の前に座った。
こんなぼっちな俺の部屋に、良い匂いのするギャル二人が座ってるとか……あまりにもエロすぎる展開だろ。
エロ同人とかだったら間違いなく童貞を掻っ攫われる展開だが……。
「うわぁ……っ。この部屋何もないし地味すぎ」
「香奈仕方ないわ……梶本はミニマリストだから」
一度しか来たことないくせに、雪川のやつ、知ったような口利きやがって。
てか、別に俺はミニマリストじゃないんだが。
「んで、料理? だっけ。こいつの料理が美味いから、乃絵留はこいつを気に入ってんの?」
「まぁ……とりあえず彼の料理を食べてみれば分かるわ」
雪川はそう言って俺に目配せしてくる。
いや……だから持ち上げすぎだっつの。
俺は主婦のコックパットを丸パクリして、そのまま調理して出してるだけなんだが。
でもまぁ、人見も来ちゃったわけで。
こうなった以上は仕方ないから、一応、晩飯の支度を始める。
雪川が買って来た食材がかなりあるわけだし、これでなんか作るとするか。
「てか乃絵留。朝のアレは何?」
「アレ? ……なんのこと?」
「転校生の机で春原と睨み合いしてたやつ。あの時、ちょうど私は離れたところにいたから遠目で見てたけど……そもそもなんで、転校生と春原の間に割り込んで行ったのか気になって。それであんたと転校生が2人でいるところを見かけて、声かけたっつうか」
なるほど……それで人見は声をかけてきたと。
「香奈……春原さんのこと、嫌い?」
「私はそもそも、春原沙優じゃなくて、あいつが嫌いなの」
人見はそう言って睨みを効かせる。
「湯ノ
湯ノ原好実というのは、クラスのマスコット的存在で身体の小さな女子生徒だ。
春原とは親友で、学級委員長の春原を支えるためにクラスの副委員長もしている。
常に温厚な春原と同じく、湯ノ原も明るいマスコットキャラではあるが、春原と違うのは素行の悪いギャルグループに対してはキツい対応をしている点だ。
俺もそこまで詳しくないが、どうやら人見と湯ノ原は相当仲が悪いようだな。
「つーか乃絵留もさ、ぶっちゃけあの優等生どもにムカつくでしょ」
「わたしは……」
まぁ、雪川はそういう尖った気持ちになるのは難しいだろうな。
根が優しい、というかそもそも派閥争いに向いてない性格だし。
「ほら前菜のサラダが出来たから食べててくれ」
俺は雪川を助けるためにも話をぶった斬るようにちゃぶ台にサラダボウルと取り皿、割り箸を2本置いた。
「梶本……わたし、生野菜も好きじゃないのだけど」
「この期に及んで文句言うな!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます