第4話 クラスのグループが分かれた理由
雪川は突然、クラスの女子が二極化した理由を教えてくれると言い出した。
「雪川、クラスの女子グループが二極化した理由を教えてくれ」
「ええ……構わない」
雪川はそう言って話し始める。
「あれは、昨年の文化祭の時のことだけど……」
「昨年⁉︎ ちょ、ちょっと待て。今のクラスの話なのに、昨年の文化祭まで遡るのか!?」
「当たり前……うちの高校って学科の編成的に1年から3年までほぼクラスの面子が変わらないから」
し……知らなかった。
確かにこの高校って、やけに1クラスの人数が少ないと思っていたが。
「梶本の後ろの席に座ってる
「そりゃ、雪川といつも一緒にいる金髪のギャルだろ? ちょっとSっぽいキツイ性格の」
「Sってあなた……はぁ、やっぱりそういう目でばかり見ているのね」
なぜか冷ややかな視線が送られる。
べ、別にいいだろそれくらい。
俺的にギャルはドSであるべきで、雪川みたいな天然おバカはレアケースなんだよ……と、心の中で思う。
「話を戻すけど、実はあの子が……昨年の文化祭を指揮っていた春原さんのグループと文化祭のことで大きく揉めたことがあって」
「やっぱしっかり揉めた感じなんだな」
「ええ。昨年の文化祭……わたしたちのクラスは飲食店をすることに決まって、それを指揮っていた春原さんたちの女子グループが、急にわたしたちへ『飲食だから落ち着いた髪色に戻して欲しい』って言って来たの」
「な、なるほど……髪色」
それで髪色を戻したくないギャルたちと、優等生たちの間で揉めた……と。
まぁ確かに飲食をやるなら、イメージ的にも落ち着いた髪色に戻して欲しいっていう気持ちは分かるし、教師が諦めたのかもしれないが、そもそも髪を染めるのはこの高校だと校則違反だったはず。
「わたしは地毛がこの色だから許されたけど……香奈たちは美容院とか市販のヤツで明るく染めているから落ち着いた色に染め直すように言われて」
「ああ、それで優等生とギャルのグループが衝突したと……って」
あれ? 今、雪川のやつ……ん!?
この髪色が地毛!?
「え、雪川のその髪って……地毛だったのか!?」
「ええ……親がイギリス人だし」
「そんなの初耳なんだが」
「なに? さっきはわたしのことよく知ってるみたいな口をしていたけど、ふっ、まだまだね」
そう言って雪川は鼻で笑う。
いや、全然悔しくないんだが。
「それより文化祭の方はどうなったんだ?」
「文化祭は……結局、香奈たちは最後まで髪を染めずにグループで文化祭をボイコットしたわ。それで完全に春原さんのグループとは亀裂が入ったというか」
こ、これが、二極化した理由……なのか。
しっくり来るような来ないような。
もっと深い何かがあると思ったのに、そんな子供染みた喧嘩だったとは。
まぁ、ギャルたちにとって髪色は生命線なのかもしれないが……。
「雪川も人見の肩を持って文化祭ボイコットしたのか?」
「いいえ? わたしは登校して文化祭ではたこ焼きとお好み焼きを焼いたりしたけど」
「は?」
「わたしは地毛がこれだし……何より、余ったお好み焼きとたこ焼きを最後に食べていいと聞いていたから……」
こ、こいつ……メシに釣られて普通にグループ裏切ってんじゃねえか!
「ギャルグループの中心にいるお前がそんなことして、大丈夫だったのかよ!」
「逆にあなたはタダでたこ焼きとお好み焼きが食べられるのに行かないの? バカなの?」
「バカなのはお前だろ! そんなことして、人見とは喧嘩にならなかったのかよ」
「……なったわ」
「なったのかよ!」
俺の中で雪川のクールイメージが、一気にアホの子に成り下がって行くのが止まらない。
「わたしと香奈は仲直りしたんだからいいじゃない」
「よく仲直りできたな……」
「でも、わたしたちのグループと春原さんのグループは和解できないまま進級した……つまりはそういうこと。もういい?」
「お、おう。ありがとう、話してくれて」
ギャルと優等生のグループが分かれた理由については、納得した部分もあればモヤっとした部分もある。
そんな一回の衝突で二極化してしまう女子の世界って、すげえ怖いな……。
雪川がクラスの内情を話し終わると、ちょうどそのタイミングで俺のアパートへ到着した。
「わたしの健康を気遣ってあなたが作ってくれるスープ……楽しみにしてる。野菜嫌いのわたしの舌を唸らせる事ができる?」
「いや何様だよ」
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