第3話 クールギャルと二人きりの道中で


 陰キャなのに無駄にお節介という俺の面倒な性格が災い(幸い)して、クラスのギャルの中心人物である雪川乃絵留と一緒に家へ帰ることになった。


 すっかり夕焼けに染まった空の下を雪川と並んで歩く。


 まだ友達の一人もできていないのに、あの雪川と二人きりなんて……こんなラブコメ的イベントが起きてもいいのだろうか。

 俺は横目でこっそり雪川の方を見る。


 歩くたびにたゆんと上下に揺れる胸元の果実。

 あんな雑な食事でこの果実が育ったと思うとジャンクフードには感謝しか……って、何を考えてるんだ俺。

 またおっぱい凝視転校生って呼ばれちまうぞ!


「あなたのお家ってこっちなの?」

「え? あ、ああ」

「そう……わたしの家も同じ方向」

「へ、へぇ……」

「………」

「………」


 ……会話、終わった。


 そりゃまぁ、こうなるよなぁ。


 俺は友達を作れない陰キャ以下のモブで、雪川は普段から無口なクール美少女。

 さっきは晩飯の話題があったから話が続いたとはいえ、共通の話題があまりにもなさすぎる。


 でもこのまま何も話さないってわけにも。


「そういえばあなたって……」

「な、なんだ?」


「名前、なんだっけ」


 ……はぁ?


「そ、そこからかよ!」

「だって……男子の名前なんていちいち覚えないから」


 さっきも話の途中で話題に飽きてたけど、マジで飽き性なのか、シンプルに他人に興味ないのか?


「俺は梶本遥希だ。いくら俺が陰キャだとはいえ、隣の席なんだから覚えておいてくれよ」

「インキャ? もしかして淫乱キャラの略称? 淫乱ってことはやっぱりあなた、わたしのおっぱいを見て」

「違うって! 何がどうなれば陰キャが淫乱キャラなんて変換されんだ!」


 ナチュラルにボケてきてんのか……?

 クールとかダウナーのイメージだったが、このギャル、まさか天然……?


「それで? 逆に梶本はわたしのことを知ってるの?」

「そ、そりゃ……雪川乃絵留のことを知らない男はいないだろ」

「ふーん……物好きね」


 自分が校内で男子から超モテてるという自覚がないのかこいつ。


 転校から2週間の俺でも雪川乃絵留の人気は知っているが、自覚がないとは……。


「あっ。そういえばさ、一つ聞きたいことがあったんだけど」

「なに? 言っておくけどエッチな質問はNG」

「しねーよ! 話の腰を折るな」


 俺は咳払いして話を戻す。


「うちのクラスってさ、お前が中心のギャルのグループと春原みたいな優等生のグループで真っ二つになってるだろ? 教室内でもギスギスしてるっつうか……それについて雪川自身はどう思ってるのかなって」

「…………」

「雪川?」


「そう……梶本は転校生だから、知らないよね」


 雪川は意味ありげに言って小さく頷いた。


「聞きたい? うちのクラスがこうなった理由」

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