第14話 春原沙優は(巨乳で)隠したいことがある。
男なのになぜか女子のグループに勧誘された上に、それが寄りにもよって"ギャルグループ"。
最終的に話の流れでギャルグループに入ることになってしまったわけだが……翌朝になっても俺は、自分の置かれた状況がイマイチ理解できないままだった。
ぶっちゃけ雪川は、ギャルグループに俺を引き入れておいて、ただ晩飯係にしたいだけなんだよな?
そして優等生グループに懐柔されないようにしたい、と。
なんともまぁ、自己中心的かつ束縛系彼女みたいな思考なんだ……。
雪川は腹の中では何を考えているのか分からない。
その側近である人見も、なんで俺なんかをギャルグループに入れることに抵抗しないのか意味不明だし……。
そういえば、ギャルグループに入ったってことは、俺も春原と話したりしたらダメなのだろうか。
当たり前だが、春原沙優は俺がギャルグループ側の人間になったことなんて知る由もない。
春原のことだから、朝から話しかけて来そうな気がするけど……どうしたものか。
「あ、そうだ。ちょっと早めに高校へ行って、机に突っ伏して寝たフリでもしていれば、春原も遠慮してくれるんじゃ……」
まぁ春原と距離を置くならそれしかないよな。
あれだけぼっちの俺のことを心配して、毎朝話しかけてくれてた春原のことを避けるのは……良心が痛む。
でも俺が春原と話していたら、右隣の雪川が怒るだろうし……。
「……よし、早めに行こう」
雪川にガミガミ言われる方が面倒だからな。
☆☆
いつもより40分も早くマンションを出た俺は、少し早歩きで高校へ登校した。
一応、早めに来てみたが……まだ部活の朝練をする生徒しか見かけないくらい、普通の生徒は登校して来てないな。
まぁこれなら余裕で教室にも一番乗りだろうし、さっさと行って机で寝たふりして過ごすか。
そう思いながら、俺は誰もいない廊下を歩き、教室の前に到着すると何の警戒もせず教室の引き戸を引いた……のだが。
「んんんー、覚えられないぃ……」
早朝の教室では、俺よりも先に一人の女子生徒が登校して席に座っており……。
「って、あれれ? 梶本くん?」
「……は、春原っ!?」
一番乗りは俺ではなく、寄りにもよって春原沙優だった。
春原と話さないためにわざわざ40分も早く家を出て、早歩きでここまで来たというのに……むしろ自分から春原と一対一で話す機会を自分から作ってしまったんだが……と、とりあえず教室に入らないと不自然だよな。
今ならあのギャルたちもいないし、春原と話しても大丈夫だろ。
「お、おはよう。春——」
「か、梶本くん! きょ、今日は早いね!」
俺が教室に入るなり急に慌ただしくなった春原。
自分の机の上にあるノートに向かって、胸元にある大きなおっぱいでドシッと乗っかりながら、無理やりノートを隠そうとした。
でっっっか……じゃなくて、ノート?
俺は興味本位で、最前列の春原の机に近づいてチラッと見てみる。
巨乳が隠していてあまり見えないが、春原が開いていたノートのページには、端から端までびっしりと何やら英文が書いてあった。
「す、凄いなこのノート。めちゃくちゃ英語の勉強してるじゃないか?
「あ、あははー。えっと、これは違くて」
「違う? じゃ、じゃあ……英検とか、資格とかの勉強なのか?」
俺が問いかけるたびに春原の頬に汗が浮かぶ。
「えとー、今日って英語の授業で小テストするじゃん? だからその勉強しないといけないから、早めに来たっていうかー」
「え? 小テストのために……? でも、今日の英語の小テストって教科書にある英文法を使って軽く当てはめるだけでいい、確認テストだって、先生は言ってたような……」
「か、軽く……」
「春原?」
「ねえ、もしかしてさ」
春原は急に椅子から立ち上がると、俺の方に歩み寄ってくる。
な、なんだなんだ!?
「梶本くんって、頭良いの!?」
春原はガン開きの目をキラキラさせて、俺とほぼキスするくらいの距離まで顔を近づけて来るのだった。
ち、近い近いっ!
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