第22話 ギャルたちの秘密……?
ギャルグループトップである雪川乃絵留と、優等生グループのトップである春原沙優と仲良くなってしまったぼっちの俺。
そんな中、春原に英語を教えたことが雪川にバレて大ピンチ……かと思われたが、雪川は怒るのではなく、逆にその行為を認めてくれた。
雪川は俺が想像しているよりもしっかり者で、ちゃんと人間関係とかグループのこととか考えて生きてるのかもしれない。
それに引き換え、俺は……何やってんだか。
そもそも俺が人見たちを怒らせるようなことをしなければ、こんなことになっていない。
そりゃ肝心の雪川が怒ってないとはいえ、人見を怒らせたのが一番面倒なのだ。
人見はギャルグループの裏のトップみたいな存在だし、クラスのギャル連中たちからの信頼も厚い。
側から見れば、雪川がクールでダウナーな雰囲気があるだけに、どちらかというと人見のような気の強い金髪ギャルの方が、若干パワーバランスが上に思えてしまう。
そんな人見を怒らせたぼっちの俺は、いつ立場を失ってもおかしくない。
(てか、そもそもギャルグループにおける俺の立場ってなんだよ! ただのコックじゃないか!)
昼休みの間、俺は窓の外に目を向けながら思いを巡らせる。
そんな感じで俺が思案していると、突然、さっき教室から出て行ったギャルたちの中で、人見だけが自分の机に戻ってくる。
その美しいブロンド髪を揺らしながら戻ってきた人見は、自分の席に一度座ると、前に座る俺の肩をトントンと叩いてきた。
「転校生、ちょっといい?」
「人見……?」
人見は真っ先に俺に声をかけてきた。
な、なんだなんだ?
「乃絵留が放課後、またあんたの家行きたいって」
「え? 俺の家?」
「……なに? 文句あんの?」
「いやそうじゃなくて、人見がそれを伝えるために……わざわざ先に戻ってきたのかなって」
家に来るなんて、後で言えばいいのに……。
「……の、乃絵留が、あんたと仲直りするきっかけで言ってこいって。べ、別に私ら喧嘩してねえのに」
どうやら雪川が仕向けたようだった。
グループの人間関係を把握して、しょうもない頼み事で会話を与えて、仲直りをさせる。
なんだよその、デキる上司みたいなムーブ……。
「いや、ごめん人見。昨日の今日で裏切ったのは俺の方だし」
「……もういいから。乃絵留からも言われたけど、あんたは昨年の文化祭で優等生たちと対立してないし、そもそもあんたは男子だもんね。そりゃグループ間の対立とか実感湧かないか」
「いや、そもそも男子の俺が女子のギャルグループとか入っても意味分かんないに決まってんだろ」
「でも乃絵留はあんたのこと気に入ってるんだから、あんたはギャルグループで囲うしかないじゃん」
「どんだけ雪川に甘いんだお前は……」
雪川に甘々な人見の姿勢に呆れてしまう。
「てか昨年の文化祭の時に、雪川が裏切っても人見は許したんだよな? 雪川とはいえ、そもそも裏切りが許されるのかよ」
「……あ、あれは」
「ん?」
気の強い人見が、珍しく罰の悪そうな顔になる。
あれ……もしかして、何か事情があるのか?
「あれは……全部、私のせいだったっつうか」
「人見の、せい?」
「……そう」
人見のせいって、どういうことだ?
こうなった以上、俺は昨年の文化祭についてさらに聞きたいと思った。
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