第61話 乃絵留のワガママとドスケベ料理長に就任
「料理担当、ちょっといいか」
乃絵留が好き放題に俺の名前を出して料理の提案しているため、さすがに俺は口を出す。
「あら、遥希。どうしたのかしら」
「どうしたのかしら、じゃない! カツ丼とかビフテキ丼とか、このクラスは野球部憩いの食堂やるわけじゃないんだぞ! あと、俺が全部作るわけでもないのに好き勝手名前出しやがって」
俺が叱ると乃絵留は口をへの字にして、ムスッとしながらこちらを睨んでくる。
「わたしは遥希の才能を独り占めした上で、みんなにも少し分けてあげようと思っているだけ」
「なおのこと意味がわからないんだが」
「いい遥希? わたしはあなたの才能を見せびらかせた上で、あなたの腕を独り占めしたいの。そのためには文化祭であなたの才能を披露する必要があるわ」
「いつから俺はお前のものになったんだ。言っとくけど俺は、文化祭で料理は作らないぞ」
「はあ? なにを言っているの? じゃあ遥希は代わりにバニーコスでもしてくれるのかしら」
「するわけねえだろ!」
「あ、あのお二人とも! こんなところで痴話喧嘩はやめてください!」
「「痴話喧嘩じゃない!」」
「ひゃっ……そ、そんなに怒らなくても」
俺と乃絵留が否定すると、湯ノ原は涙目になりながら小さくなっていく。
やべ、つい湯ノ原に当たっちまった。
「あーいや。びっくりさせてごめん湯ノ原。君の言う通りだ」
「ひ、ひどいです! 沙優ちゃんがいないからって好実をいじめてっ」
「でもさ、そもそも湯ノ原みたいな唯一のツッコミ役がいながら、なんで乃絵留の言いなりになってんだよ」
「それは……」
「ん?」
湯ノ原は恐る恐るスマホを取り出すと、instargram(インスターグラム)のアプリを開いた。
「梶本くんは知らないかもしれませんが、実は最近、雪川さんがよくSNSで梶本くんの料理を写真付きで自慢しているので、すでに女子たちは梶本くんの料理の腕に信頼があるというか」
「……は、はあ!? おい乃絵留! なにを勝手に!」
乃絵留の方を見ると、乃絵留は優等生グループの女子たちに俺が作った料理の写真を見せ、「美味しそーっ」と言われてご満悦な顔をしている。
(こいつ……まさか俺の料理で自己承認欲求を満たそうしてるんじゃ)
そんなにチヤホヤされたいなら、その容姿でモデルにでもなれば一瞬で満たされるだろ! お前は!
「まあ遥希、こういうことだから。あなたが喫茶店の料理長をやることは、優等生グループのみんなも大賛成みたいよ」
いや、喫茶店がコンセプトなのに料理長って。
「梶本くん料理すごいんだよね! いつも乃絵留ちゃんのSNSで見てるよー」
「沙優も梶本くんの料理褒めてたよね」
「梶本くんお願ーい! 私たちにも教えてー」
優等生グループの女子たちが揃って俺に甘えた声でお願いしてくる。
お、俺の人生で、これほどまでに女子たちから求められる日が来ようとは……ごくり。
ぶっちゃけ、悪い気はしないな……うん。
「……ちょっと遥希。なにわたし以外の女から頼まれて鼻の下を伸ばしているのかしら。あくまであなたはわたしのために作るギャルグループのコックなのよ」
「だから広めてる張本人のセリフじゃねえって。言動と行動が真逆に向かってんぞ」
こういう時の乃絵留は、ボケなのか本気なのか分からない。
「梶本くん、みんなそう言ってることなので、料理長を引き受けてもらえませんか?」
「ええ……でもその前に、文化祭の喫茶店なんだから、乃絵留が言ってた肉料理は出さないぞ」
「ちょっと遥希! わたしはお肉を!」
「ダメだ。言うこと聞かないなら料理長なんかやらないし、俺は大人しくバニースーツ着るからな」
「それは……ちょっと見たいわね」
「頼むからそこを本気にするな! もっと食いさがれよ!」
とまぁ乃絵留とは言い合いにはなったものの、優等生グループの全会一致により、俺は料理長として喫茶店の料理をまとめることとなり、乃絵留が欲しがっていた肉料理メニューは全部消去されたのだった。
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