第27話 春原沙優はギャルグループと仲良くなりたい?
は、春原まで……俺の部屋に!?
「って、待て待て!」
「え? どしたの?」
いくらなんでもそれはまずいだろっ!
だって、相手はあの春原沙優だぞ?
雪川乃絵留や人見香奈を家に入れてんのもヤバいが、春原は……その、また違う類いのヤバさがある。
雪川乃絵留は一応"アレ"でもギャルだから、周りに見つかっても「ギャルだから」ってことでほぼスキャンダルにはならないが、春原沙優の場合は違う。
春原は高校のアイドル的な存在。
清楚なイメージがあるし、男子の家に入ったなんてのが知れ渡れば……俺の高校生活、今度こそ終わる。
「や、やっぱやめといた方がいいと思うぞ! 俺みたいな男子の部屋に入るとか、色々とまずいっつうか」
「え? でも梶本くんって一人暮らしなんだよね?」
「え? あ、ああ」
「それなら大丈夫じゃない?」
いやいやいや、何も大丈夫じゃないんだが!
春原は平然とした顔でそう言ってむしろ俺の言ってることがおかしい、みたいな反応をする。
「普通に考えたら嫌だろ? クラスメイトの男子の部屋とか……なんか臭そうとか思わないのか?」
「え、梶本くんの部屋って臭いの?」
「臭くないが!」
わざとなのか本音なのか分からないが、春原は雪川並みにボケてくる。
くっ、こんなコントをやってる場合じゃない!
「そうか! も、もしかして春原って……結構男子の部屋とか入り慣れてるのか? 彼氏とかの」
春原は人気者だし、男女問わず仲良さそうだからその可能性は高そうだ。
春原が過去に誰と付き合ってたとか、そういう話は、俺が転校生だから知らないだけかもしれないし……。
「彼氏? 男子の部屋? あたし彼氏いないし行ったことないよ?」
「な、ないのか?」
「だってあたし、部屋に招待されるくらい仲良しな男子とかいたことないし」
「……そ、それなら、なおさら俺の部屋に来るのはおかしいだろ!」
「おかしくないよ! 雪川さんが舌鼓を打った梶本くんのお料理、食べてみたいもん!」
おいおい……どんだけ料理のこと気になってんだ。
ただコックパッドのメニューパクってるだけなのに……!
「あっ! じゃあさ、こうしようよ!」
「え?」
「あたし以外にも誘うの! 雪川さんや人見さんも! ギャルグループのみんながいるなら、梶本くんも大丈夫だよね!?」
な、何も大丈夫じゃないんだが(本日2回目)。
「二人を呼べば、あたしも一緒に梶本くんのお料理食べれるし、梶本くんみたいに人見さんたちと仲良くなれるかも! それなら文化祭に向けて一石二鳥じゃん!」
あまりにも短絡的な思考すぎて、俺は言葉を失った。
そんな簡単に仲良くなれるなら、お前のコミュ力でとっくに仲良くなってんだろうに。
(ああ、ダメだ……うちのクラスの二大美少女はどちらも漏れなく"アホの子"の類いだ)
雪川は無自覚系天然のアホだが、春原は……生粋のアホっぽい。
そう考えてみると、部活動用紙の件といい、いかにも『しごでき』なロリ、湯ノ原好実が側にいるお陰で、春原は完璧美少女のイメージが保てていると見て間違いないな。
「ね、そうしようよ梶本くんっ! いい加減、雪川さんと仲良くなりたい、から……」
いい加減……?
春原がボソッとこぼしたその言葉が、変に耳に残る。
「とにかく! お願い!」
春原に深々と頭を下げられて、俺は今までにないくらい困る。
そこまで言われると……はぁ。
「わ、分かったよ……とりあえず、雪川に聞いてみるから」
「ほんと!?」
「まぁ、俺も文化祭実行委員になった以上、春原と雪川には出来るだけ仲良くなってもらいたいし」
「やったっ。じゃあ今日の放課後は、梶本くんのお部屋で親睦会ってことで!」
親睦会じゃなくて……敵対組織同士の和平交渉だと思うのだが。
こうして、俺の家でギャルグループと優等生グループのトップたちが集うことに……なると思われたが。
「……嫌よ」
「へ?」
「あなたの料理はわたしだけのものだし……あの子に食べさせる義理はないわ」
教室に戻ってすぐに話した俺だったが、雪川は間髪いれずに首を横に振るのだった。
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