第48話 ドスケベコスプレは何処へ。
田畑に囲まれた高校から、わざわざ街の方まで歩かされて、やっと着いた大通りのとある店。
大人びたブティック街の一角にある、シックで英語名のその店には、ショーウインドーからしてコスプレの専門店らしい衣装が並んでいた。
見たことあるようなアニメキャラの服がこんなにズラッと……まさかこんな店があるとはな。
「人見はよくこんな店を知ってたな」
「香奈はこの辺にあるファッション系のお店なら全て把握しているわ」
「へえ……」
「さ、入るわよ」
率先して店内に足を踏み入れる乃絵留。
こういう時も物怖じしないのは素直に尊敬するが。
俺たちは乃絵留に付いていくように店内へ入った。
「うお……」
店内に広がるコスプレ衣装の数々。
凝りに凝った衣装が並び、服だけじゃなくて、目が痛くなるくらい鮮やかなウィッグもたくさん飾ってあった。
「わぁ……可愛いお洋服がいっぱいですねっ」
「あ、これ好実ちゃんに似合いそう」
沙優と湯ノ原の優等生二人が意外とはしゃぎだす。
普段生活してると湯ノ原はもっとお堅いイメージだったが、放課後になると……ただのロリだな。
「な、なんですか梶本くんっ! じっとこっちを見て! 文句でもあるんですか!」
「ああ、いや、何でも」
ロリに向かってロリみたいって言ったら失礼だよな(哲学)。
俺は二人から離れて、店の奥にいた乃絵留の方へと歩み寄る。
ん? なんだ乃絵留のやつ……。
乃絵留はやけに険しい顔を浮かべながら、服を眺めている。
なんだ? やっぱりコスプレは性に合わなかったとか?
まあ、別に乃絵留はオタクコンテンツに詳しいわけじゃないし、仕方ないか。
「どうした乃絵留? やっぱりコスプレが嫌……」
「だめね。ここは可愛いコスプレしかないわ」
「は?」
「ドスケベなコスプレがないの。もっとこう、肌の露出が多いコスプレが」
そんなコスプレがない方が、この街の治安のためには良いと思うのだが。
「お前な。そこまでドスケベなコスプレに拘る必要はないだろ? 俺はコスプレ喫茶とは言ったが、別にドスケベなんて」
「あなたが……」
「俺が? なんだよ」
乃絵留はコスプレを物色しながら、難しい顔になる。
「あなたが……見たいと思って」
「はあ? お、俺のせいにするな」
「……はぁ。別に何でもいいわ」
乃絵留は唇を少し尖らせながら言うと、適当な服を手に取る。
「春原さん? とりあえず適当に見て回りましょうか。あと、目的のドスケベコスプレはないみたいよ」
「えっ?」
「なに? 期待していたの?」
「ち、違うからっ! ドスケベなんて期待してないからっ」
沙優は必死に否定する。
もしかして沙優のやつ……見てみたいとか言ってたけど、本当は着たかったとか?
そう考えると……なんか、エロいな。
かくいう俺も心のどこかで、ドスケベコスプレを期待していたのかもしれない。
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