第16話 優等生美少女とギャル美少女に挟まれてペシャンコになりそう(小並感)


 校内トップクラスの美少女で、クラスの人気者であるあの春原沙優から、勉強を教えて欲しいと頼まれた俺……。


「そんなこと、言われても」


 春原が勉強苦手なのが衝撃的すぎて忘れていたが、そもそも俺は昨日からギャルグループに無理やり入れられてしまった。

 つまり春原とは距離を置かないといけないわけで、今日だって春原から距離を置くつもりで早く登校して来たのだが……なんでこんなことに。


(もし春原と話してるところを見られたら、また雪川から嫌な顔をされそうではあるが……春原も春原で、周りのイメージとは違う自分に苦しんでるんだよな……)


 ここまで話を聞いておいて断るのは……ちょっと悪い気もする……くっ、こうなったら。


「と、とりあえず……今日やる英語の小テストの内容を教えるくらいなら、別にいいけど」

「ほんと? めっちゃ助かるよ梶本くんっ!」


 春原は俺の両手を取ると上下にぶんぶん揺らす。

 同時に春原の巨乳も揺れて、目の前がプルンプルンパラダイスと化している。


 くっ……可愛い顔して、とんでもない胸元の爆弾揺らしやがって。


「それでさ! さっそくなんだけど……ここの文法が間違ってる理由が分かんなくて!」

「え? お、おう」


 春原の胸ばかりに気を取られていた俺は、我に返って春原のノートを確認する。

 教科書付属の問題集をひたすら解いて、丸つけまでしたみたいだが、間違えた理由がイマイチ分からないらしい。


「えっと……春原? とりあえず、動名詞の話になるんだが、decideの後には動詞のing系は使わなくて、不定詞をじゃないと。あと逆にenjoyはing系じゃないと間違いになるんだが」

「ほぉー」

「ほぉ、って! これはかなり前に習ってるはずだと思うんだが」

「ふーん」

「ふーんて!」


 やっぱり春原はなんとなくで覚えてる感じか。


 数学も英語も、公式や文法などの"ルール"は存在するが、記憶教科みたいに質問と答えが固定されていない。


 中学くらいから急に勉強が苦手になる人は、だいたいこれでつまずくイメージがある。


(小学校までは比較的記憶力があれば出来る内容が多いが、徐々に応用力が必要な問題が増えるからな)


 その後も俺は春原に、英文法の基礎的なところから話しながら、彼女の間違いを指摘していく。

 春原は自分でも言っていたが、記憶教科以外はガッツリ弱い感じか。

 一応、小テスト範囲の振り返りはしたが、春原はなんとなく覚えている感じだった。


(こ、これは意外とかなり辛抱強く教えないと覚えてもらえないタイプかもしれないな)


「ど、どうだ春原? 少しは分かるようになったか?」

「梶本くんの解説……めっっちゃ分かりやすいよ! 動画サイトの塾講師の動画より分かりやすい!」


 基礎中の基礎からじっくり話したから頭がパンクしてないか心配だったが、どうやらある程度は分かってくれたみたいだ。


「特に今やってる関係詞とかの応用も、授業ではずっと意味わかんなかったけど、梶本くんの説明で凄い分かったもん!」


 なぜか一人でテンションが上がっている春原。

 教えている側からしたら、あまり伝わってる感覚がなかったんだが……まぁ、いいか。


「な、なあ春原。そろそろみんな来そうだし、これくらいにしないか?」

「あ、それもそうだね。ありがとう梶本くん、この後の小テストが楽しみになってきたよー」


 教えながらも、雪川が来ないかヒヤヒヤしていたが、ギャルどもが来る前になんとか切り上げることができた。

 すると、次第にクラスメイトたちが登校して来て、教室内が賑わう。


(ふぅ……とにかく何ごともなく済んで良かった良かっ……)


 その時、クラスの後ろの引き戸から透明感のある美少女が音も立てずに入ってきた。

 雪川……今日は無駄に早いな。


 危なかった、と胸を撫で下ろしながら俺は席に座りながらスマホを弄る。


「……おはよう」

「え? あ、お、おはよう」


 昨日ギャルグループの誓いを交わしたからなのか、自分から挨拶をしてくる雪川。

 俺も仲間ってことなのだろうか……いやまあ、ただの晩飯当番なんだが……。


「ねえ……今日は英語の小テストがあるのよね?」

「あ、ああ、そうだけど……」


 って、なんか、今……ん??????


 は、遥希はるき????

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