第34話 ドスケベギャルとドスケベクッキング
さっきまで文化祭について語っていた雪川だったが、もう晩飯のことで頭がいっぱいらしい。
「肉料理以外は認めないわ」
「あ、安心しろ! 晩飯は豚丼だ!」
「豚丼っ!?」
「だから大人しくあっちで待ってろって」
俺はキスしそうな距離まで近づいてくる雪川を押し返して、作業に戻る。
ヤッベぇ……めっちゃドキドキしたし、良い匂いしたぁ……。
顔や見た目(特におっぱい)と頭の良さだけなら、圧倒的美少女なのが雪川乃絵留である。
中身は……まぁ、クソほどワガママ放題のお嬢様と言ったところか。
「それじゃ人見、手伝ってくれるか」
「はいはい」
「あのっ、あたしたちも何かお手伝いを」
俺が人見に料理の手伝いをお願いしたら、春原も立ち上がって聞いてくる。
「こっちは私と転校生で大丈夫。乃絵留たちはそっちで遊んでな」
「香奈、子ども扱いはやめて欲しいのだけど」
「実際、乃絵留はおっぱい以外ガキでしょ」
人見は笑いながら言って、雪川はムスッとしながら部屋の中央にあるちゃぶ台へと戻って行った。
これはあくまで人見だから言えるのであって、俺が言ったらただのセクハラである。
つまるところ、俺も同じことを考えていたということだ。
「そんで、私は何やればいい?」
「ジャガイモを擦ってもらってもいいか?」
「ジャガイモ? いいけど」
俺はおろし器と洗ったジャガイモを人見に手渡す。
さて、俺の方は肉をじっくりと調理していくとしよう。
「ちょい転校生、アレ見なよ」
「ん? どうした?」
俺は人見に言われてちゃぶ台のあるリビングの方へ目を向ける。
「あの春原沙優と雪川乃絵留が二人でちゃぶ台囲みながら話してる……あんなの、クラスの女子が見たらどうなることやら」
人見はやれやれと言わんばかりに呆れながらも、優しい瞳で二人のことを見つめていた。
話しているというか、おそらく春原が一方的に話しかけているようだが……。
「人見はさ、雪川が春原のこと嫌ってるの知ってたのか?」
「まあね。1年の時から乃絵留は、春原に声かけられても素っ気ない態度だったし」
やっぱ1年の時からずっとそんな感じだったのか。
「あんま褒めたくないけど、春原ってクソ美少女じゃん。顔はアイドル顔で、スタイルは胸デカくてグラドルみたいな身体のラインしてるし……だから乃絵留は、春原のこと同族嫌悪? みたいな感じで嫌ってると思ってた」
「そう、だったのか」
だが実際のところ雪川は、自分とは対照的に明るい性格で人気者の春原を苦手に思い、次第に嫌うようになっただけ。
別に二人が高校生とは思えないくらい、胸がデカいから同族嫌悪しているわけではない。
「だからさ、逆に私と仲良くしてくれんのって、私がそんなに可愛くないからなのかなって。ほらよくあるじゃん。可愛い子ほどブスと一緒にいたがるって」
「い、いやいや! 人見がそれ言うのはナシだろ! 俺は男だからいいけど、クラスの他の女子にそれ言ったらただの嫌味だからな?」
「は? なんで」
「だって人見も雪川と同じくらい可愛いじゃないか。ほんと、自虐ネタも大概にしろよ」
あと人見は胸の大きさも雪川とほぼ同格。つまり他の女子たちと比べても普通にデカい。
「……は? な、なにそれ、ナンパ? 転校生、きっも。まじキモいし」
急な早口と同時にとんでもないペースでジャガイモを擦り下ろす人見。
「お、おい、そんなに早く剃り下ろすと指まで行くぞ」
「う、うっさい! ほんと、キモい、●ね!」
ええ……。
人見は急にイライラし出すと、胸を小刻みに揺らしながらジャガイモを擦り下ろす。
うわ、えっっっ……じゃなくて、俺、また何かやっちゃったのか……?
「で、でもさ」
「ん?」
「……私のことフォローしてくれて、あんがと」
「え、お、おう」
さっきまでの人見の優しい瞳は、横目で俺に向けられていた。
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