第51話 ドスケベトンデモ発言の連発


「まぁ、ドスケベコスプレ貯金のことは分かったから、とりあえず俺は晩飯の支度始めていいか?」

「ええ……ん?」


 とんでもない話が終わり、俺が晩飯の準備のために立ちあがろうとしたら、乃絵留がやけに玄関の方を注視していた。


「ったく、今度はなんだよ」

「来るわ」

「は?」


「誰か……来るわ」


 謎にホラー漫画みたいなテンションで乃絵留は言うが、全く緊張感が伝わって来ない。

 誰か来るって……なんで分かるんだよ。


 そして、本当にしばらくしてから『ピンポーン』とドアベルが鳴らされる。


「ま、マジで誰か来た……なんで分かったんだよ」

「嗅覚よ」

「犬かよ」


 いや、もはや犬よりすげーな。


 俺はキッチンに行く前にリビングから玄関に行く。


 一体、誰が……っ。


「はーい、今開け……っ?」


 玄関のドアを開けると、そこには。


「いやー、急にごめんね遥希くん。来ちゃった」

「さ、沙優? どうしたんだよ」


 玄関先にいたのは、ビニール袋を手に提げた沙優だった。


「遥希くんのお料理の味が気に入っちゃったというか、なんというか。今日も食べたいなーと思って、好実ちゃんを送ってからこっち来ちゃった」

「来ちゃったって……」

「あ、安心してっ! 今日はあたしもちゃんと食材を買って来たんだよ! ほら、特売セール中だったシチュー用の」

「あら……やはりあなただったのね、春原さん」

「の、乃絵留ちゃん!? も、いたんだ……」


 奥から乃絵留が顔を出すと、沙優が気まずそうに言う。


「沙優、とりあえず上がってくれ。食材はありがたく使わせてもらうから」

「うんっ! お邪魔しまーす」


 沙優はそう言って俺に買って来た食材を手渡すと、家の中へと入る。

 またしても、クラスを代表する超絶美少女2人が俺の部屋に……はぁ。


 毎回思うけど、俺の料理なんて至って普通だし、そのために家に来たり、ドスケベコスプレ着たりする方がある意味異常なのだが。


 まぁ、美少女が自分の部屋にいる光景を眺めながら作る料理は美味くもなるか。


「あなたも……遥希のご飯を食べに来たのかしら?」

「う、うん」


 リビングに戻るなり、2人はぎこちなく会話を交わす。

 頼むから喧嘩はするなよ。

 とりあえず文化祭をこれからどうするかとか、適当に話していてくれ。


「なるほどね。つまり春原さんは、遥希が料理のおこぼれを貰いに来たのかしら?」

「もぉ……相変わらず乃絵留ちゃんはあたしにだけ冷たい言い方して」


 沙優はムスッとほおを膨らませる。

 可愛い……じゃなくて。


「おい乃絵留。あんまりトゲトゲすんなよ、実行委員の仲なんだし」

「……ふん。ところで春原さん」

「な、なに?」

「わたしと遥希は今後、ドスケベコスプレ貯金をすることにしたけど、場合によってはあなたにもドスケベコスプレを着てもらうから」

「はあ!? ちょ、乃絵留お前は何を」


 トンデモ発言を連発しまくって気まずい空気をさらに混沌へと追い込んで行く乃絵留。

 なんで春原にも言っちゃうんだこいつは!


「ど、ドスケベ? どういうこと?」


 春原は目を丸くして(説明能力皆無の)乃絵留じゃなくて、俺の方に質問を投げかけてくる。


 誰か、俺の代わりに説明してくれ……マジで。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る