第18話 ギャルに挟まれるぼっちの日常会話


 昨日まではただのぼっちだったのに、天変地異(ギャル接近)が起きたことで、ギャルグループに入ることになり、俺の人生は180度変わってしまった。


 クラス内で対立しているギャルと優等生の、二大女子グループのギャル側についてしまったということは、優等生側と仲良くするのは禁忌。


 それなのに俺は、今朝ガッツリ春原に勉強を教えており、距離を置かねばならない春原とさらに仲良くなりつつある。


 俺は一番前の席に座る春原の方をチラッと見る。

 するとたまたま、友達と話していた春原と目があって、春原は小さく微笑みながら俺の方に軽く手を振ってきた。


(か、かわええ……じゃない! 普通にこれが雪川にバレたら、ギャルグループから八つ裂きに遭うかもしれないんだぞ!)


 俺が一人げに席で怯えていると、前から短いスカートを揺らしながら、金髪のギャルが歩いてくる。


「おはよ、転校生」

「あ、お、おはよう……人見」


 人見香奈……彼女もまた、雪川の親友としてギャルグループの中心にいる人物。


 にしても雪川が遥希って呼んできたのにはビビったが、人見はまだ転校生って呼んでるし、やっぱ雪川の距離感がバグってるんだよな。


 人見の距離感は、雪川のバグり具合を再確認するのにはちょうど良かった。


「ねえ転校生、聞きたいことあんだけど」

「えっ……」


 き、聞きたいこと!?


 や、やべぇ……どう考えても心当たりが、春原と早朝二人きりか、春原と勉強会か、春原と仲良く話してた、しかないんだが(つまり一択)。


「あんさ」

「……っ」


「今日の1限の英語って、小テストやんの? いつも授業聞いてないから知らないんだけど」


「え、英語の……テスト?」

「あれ、やんないの?」

「や、やるやる! あるぞ、小テスト!」


 まさかのめっちゃ普通の質問で、俺は動揺しながらも答える。


 あ、あっぶねえ……バレてないな。


 心臓のバクバクが少し落ち着いた。


「マジ面倒……そりゃ乃絵留は大丈夫だと思うけど、私あんまり英語得意じゃないし」

「え? 雪川って英語得意なのか?」


 雪川に聞いてみると、雪川はこっちを向いて小さく頷く。


「前も言ったけど……わたしの親、外国人。昔はイギリスに住んでたわ」

「ああ、そういえばそうか」


 雪川自身が普通に日本語話すからあんまりそのイメージはなかったが、そういえば雪川の親ってイギリス人だったっけ。


「乃絵留って私らとつるんでちょっと悪ぶってるけど、定期考査いっつも学年1位だし」

「は? マジで? 1位!?」


 クールぶってるだけで中身がど天然なあの雪川が……勉強できるだなんて。


 なんとなく雰囲気だけは知的なイメージはあったが、普通に頭良いとか……天然なのを除けば完璧美少女じゃねえか。


 つまるところ、春原が勉強できれば完璧なのと似たようなものだ。

 二人とも根本的な問題だから無理そうだが……天は二物を与えずってことだな。


「あなたは? 頭良いの?」

「よ、良くねえよ。前の高校じゃ下の方だったし」

「転校生ってただでさえ暗いのに、勉強もできないとか……マジで料理の腕だけじゃん」


 逆にお前らが料理の腕だけ評価してる方が謎なんだが……。

 まぁ料理の腕はさておき、俺に何の取り柄もないのは確かだ。

 東京にいる時の俺は、全てにおいて周りに勝てないから……自分が嫌いになって。


「——香奈。あまり遥希を責めないであげて」

「ゆ、雪川……?」


 また雪川は、俺のことを……。


「遥希は生きていける才能があるわ」


「だからお前は俺の料理を過剰評価しすぎてるって!」

「ま、それもそうかもね……頑張りな、転校生」

「お前もかよ! 俺は別に料理人とか目指してねえから——」


「梶本遥希くん! お話中のところ申し訳ないのですが! ちょっといいですか!」


 俺たちが話しているところに突然、割って入ってきたほぼ小学生みたいな声と、前髪ぱっつんの黒髪ロングな童顔マスコット。


 ゆ……湯ノ原好実っ?

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