第37話 波乱の幕開け


 乃絵留と沙優の二人と一緒に職員室へ。


 昨日乃絵留も実行委員をやりたいと言い出したので先生に報告した……が。


「あのー、雪川さん? ちゃんとクラスをまとめられる? 黒板の前でお話とかできるかな?」


 佐藤先生は普段よりも優しい口調で乃絵留を諭す。

 なぜか乃絵留は先生から子供扱いされていた。


 ナチュラルに煽りにも聞こえてしまうが……乃絵留の場合、学年1位とはいえ普段はほぼ喋らないし、ダルそうに過ごしてるから、まぁ仕方ないと言えば仕方ない。


 その上、先生はまだこっちの高校に赴任してきたばかりだから雪川乃絵留の本当の性格とか知らないし。


「わたし……ちゃんとまとめられます。それに、梶本くんもいるので」


 は? お、俺?


「そうですよ先生! 梶本くんもいるから大丈夫ですっ」


 沙優まで何言ってんだよ!


「うーん……まぁ、二人から信頼されてる梶本くんがいるなら、大丈夫かな?」

「は、はぁ」


 ったく、先生も先生で適当すぎる。

 そもそも乃絵留が実行委員に入るなら俺なんか要らないと思うが。


「いやー、でも私てっきり春原さんと雪川さんが仲悪いからグループが真っ二つなのかと思ってたけど、話してる感じ意外と違うんだねー?」

「「…………」」


 沙優も乃絵留もこれには黙っていた。


 どうやら先生も、沙優と乃絵留の間に確執があると思っていたようだ。

 まぁ、側から見れば普通そうだよな。


(沙優としては仲良くしたいんだろうけど、乃絵留がコレだからなぁ……)


「それじゃ今日から実行委員3人でよろしくね。ちゃんと全員、文化祭に参加させて、楽しく文化祭やろー!」


 他所から来て何も知らない佐藤先生は張り切っているものの、それが簡単じゃないことを知ってる俺たちは、素直に喜べないんだよなぁ。


 ☆☆


 諸々の報告をして、乃絵留が実行委員になることの許しを得た俺たちは廊下を歩いて教室へ戻っていた……のだが。


(ま、周りの視線が……痛い)


 あの春原沙優とあの雪川乃絵留の二人が、一緒に廊下を歩いているのも異常。


 だがそれ以上に……。


「あの真ん中にいる子、誰?」

「あの二人の真ん中歩けるとか……すっご」


 沙優と乃絵留が気まずいのか並んで歩かないので、必然的に彼女たちに挟まれて真ん中を歩かされている俺……。


 両手に華、というよりも、バクダンを持っている気分なのだが。


「ね、ねえ! 文化祭について、今後の方針を固めるために、放課後3人で話し合いしない?」

「話し合い……?」


 乃絵留は見るからに嫌そうな顔をする。

 いや、お前も実行委員になったんだから嫌そうな顔すんなよ。


「昨日は食材とかご飯とかご馳走になっちゃったし、わたしがスノトのフラッペ奢るからさっ、ね? どうかな?」


 沙優は必死に乃絵留のご機嫌を取ろうとしている。

 いや、さすがに……乃絵留は。


「……ふ、フラッペ……んん、そこまで言うなら、いいわよ」


 こいつ……ほんとちょろいな。

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