第15話 買い物帰り
スーパーをあとにしたオレは、家路へ向かう。
隣では、鷹塚さんがくっついて歩いている。
オレの手には、事前に用意していたエコバッグがあった。
でも隣の鷹塚さんも、さっき買った品物が入っているレジ袋を持っているんだ。
レジで会計をしているとき、「キミ、それじゃ重いだろ? 半分持つよ」と言ってくれて、こうなった。
何か見返りを要求されるんじゃないかと不安だったけれど、今のところそういうのはない。もしかして完全に善意のお手伝いなんじゃないかと疑ってしまう。
でも、岩渕さんを無理やり好きにさせようとした人でもあるからなぁ。
まだまだ油断しないようにしよう。
これも鷹塚さんの作戦かもしれないし。
「ところで。さっき聞きそびれたんだけどさ。キミは自分の意思で、妹さんの面倒を見たり、こうして買い出しをやってるの? ご両親から言われているわけではなく?」
「そうだよ」
「放課後は部活をしたり遊んだりしたいと思ったことは? これじゃ、好きに遊ぶ時間も確保できないだろ?」
クラスメイトから放課後に誘われることもある。もちろん、誘われたら嬉しいし、一緒に遊びたい気持ちにだってなる。断るたびに後ろめたくて、心の中で何度も謝ることだってある。
「……それはたまに思うけど。でも、オレは両親のことも、妹たちのことも好きだから。何か力になれたらって思ってやってるだけだよ」
「妹たち? なるほど。キミには妹が二人いるんだね」
また鷹塚さんに
「……鷹塚さんだって、そういう気持ちになることはない? 家族のために、自分でもできることをしたいとか」
「うーん、そうだね。どうかな。さすがにキミのようにはできないかな」
妙に歯切れが悪くなる鷹塚さん。
「それよりも今は、キミをぼくの家族にしたいよ」
「オレ、鷹塚家の養子になる気はないよ?」
「違うよ。キミとぼくとで家族になるのさ」
「ま、まだ付き合うって言ってもいないのに、結婚の話に飛んじゃう……?」
「それだけキミのことを好きってことだよ」
すると、鷹塚さんはオレに囁くように唇を寄せてくる。
「それに、こうして一緒に買い物袋を持って二人で歩いていると、同棲しているカップルが家に帰ろうとしているみたいでワクワクしてしまうしね」
「た、鷹塚さんは想像力豊かだなぁ……」
「楽しいことを考えるのは、いつだって大事なことさ。悪くない妄想だろ?」
「し、知らないよー」
ここで同意なんてしようものなら、ますます鷹塚さんのペースにはめられてしまう。
相変わらず妙に積極的な鷹塚さんに恐れをなしていると、まもなくオレが住む一軒家が見えてきた。
「あそこがオレの家だよ…」
「ふーん。なかなか立派なお家だね」
鷹塚さんに住んでいる家を知られるのは嫌だなぁ、という気持ちはあったんだけど、荷物運びを手伝ってもらった手前、用済みとばかりに追い返すのも可哀想かなって思ったんだ。
「家族のことも、お家のことまで教えてくれるなんて、よほどぼくに気を許してしまったのかな?」
ニヤニヤする鷹塚さん。
しまった。勘違いさせちゃったみたい。
「嬉しいよ。これで、キミに会えない日はなくなりそうだから」
まさか、休日に押しかけてくるなんてことはないよね……?
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