第23話 家族に見せる顔
見回りを終えると、オレはポケットからスマホを取り出した。
「あっ、ごめん。ちょっと電話していい?」
「いいよ。あ、私ここにいてもいいやつ?」
「妹に連絡入れるだけだから。今日は家に留守番で。まあ、母さんもいるから大丈夫だとは思うんだけど、一声かけておかないとね」
「仲いいきょうだいなんだねー。うちは3つ下の弟がいるんだけど、めっちゃ生意気だよ。小さい頃は可愛かったのになー」
岩渕さんには弟がいるのか。
新しい岩渕さん情報を手にした喜びを感じながら、美月に電話をかける。ラインの方が手軽なんだけど、あいつは平気で既読無視するから、こっちの方が確実。
「あ、もしもし? 美月? うん、オレだけど。大丈夫だった? うん、それならいいんだけど。海未は? うん、うん、ご飯は大丈夫? そっか、母さんが。え、でも急な仕事? まあ、在宅のやつならまだいいか……でも、そのわりには美月余裕っぽくない? なんで? ……ああ、それなら、まあ。あとよろしくね。明日の朝には帰るから」
電話の向こうの美月は、「えー、もう一泊しとけよー、夜ふかし怒ってくるやつがいないから気楽だぜー」なんて言ってくる。
「ダメだよ、ちゃんと寝ないと。帰ったときに寝不足な感じしてたら、夕ご飯はおかず一品抜きだからね?」
美月との通話を終えると、隣の岩渕さんがクスクス笑っていた。
「オレなんか変なこと言っちゃった?」
「ごめんごめん。葉山くん、今めっちゃお兄ちゃんの顔してたなーって」
「そ、そう? なんか恥ずかしいよ……」
「いやいや、恥ずかしがることないでしょ。私は嬉しかったよ、いつもの『みんなの葉山くん』って感じじゃない葉山くんも貴重だからね」
「貴重……」
そう思ってくれているってことは、ちゃんとオレに興味を持ってくれているってことかな?
「でも、本当に無理に頼んじゃってごめんね。妹さん留守番させるの心配だよね?」
「気にしないでよ。一応、家には母さんもいるから」
電話での反応を思うと、心配するようなことはなかった。
「それに、美月が思った以上に平気そうだったんだよね。もうちょっと助けを求めてくるかなって思ったんだけど」
「あらら、ちょっと寂しいかもね。でも前よりお姉ちゃんになったってことじゃない?」
「そうかも」
「今の葉山くん、お兄ちゃんっていうより親目線な感じあるね」
「えー、そこまで心配性じゃないんだけど」
最初は一人で緊張しながらの見回りだったけれど、岩渕さんのおかげで充実のひとときになるのだった。
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