第4話 謎の手紙
ある日の放課後。
我が家の食事担当として、オレはスーパーのタイムセールに向かわないといけなかった。
父さんは単身赴任で、母さんは仕事で忙しいから、家事全般はオレの役目。
育ち盛りの二人の妹たちのために、良い食材を安く手に入れるのはオレの大事な仕事だ。
そんなわけで、クラスメイトの誘いを断って昇降口へと向かったのだが。
「……なんだ、これ?」
朝にはなかったものが、オレの靴の上に置かれていた。
四つ折りされた紙片。
「これ、まさかまさかのラブレターってやつでは……?」
話には聞いたことがある。
好きな人に思いを告げるために、手紙を出すことがあると。
けれどそれは、創作の中にしか存在しない話であって、現実に存在するとは思っていなかっただけに、お手紙を手にしたときのオレは心臓がバックバクだった。
「いや、オレに告白するようなモノ好きなんて……」
先日の告白の風景を思い出しながら、こっそり手紙を開く。
そこには、放課後に中庭に来てくださいという旨の言葉が、実に美しい文字で綴られていた。
「ら、ラブレターじゃないかこれ!」
思わず大きな声を出してしまい、周囲をキョロキョロする。
……よかった。オレの声が届く範囲には誰もいなかったみたい。
でも、どうしてオレみたいな男らしくない男子にラブレターが?
「……まさか男子から?」
ありえそうな話だ。
でも、いたずらの可能性もある。
だって、差出人の名前がないのだから。
これじゃあ男子か女子かもわからない。
「でも……もうすぐタイムセールが始まるのに」
育ち盛りの大事な姉妹と、まだ見ぬオレを好きらしい誰か。
両者を天秤に掛けたオレは――
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