第42話 返ってくる結果

 ついに中間試験の答案が返ってきた。

 教室には、クラスメイトの悲喜こもごもで溢れた光景が広がっている。


「やったぁぁぁぁぁ、前回より全教科5点アップしてたぜ~」


 雉田きじたくんは、赤点回避をした上に成績アップしたことで、涙を浮かべて嬉しがっていた。


「そりゃそうだ。葉山に勉強見てもらったのに一切成績が上がらなかったら俺はお前を殴ってた」

「怖っ! 鈴木、過激派すぎるだろ……」

「鈴木くんはどうだったの?」


 オレは言った。


「全教科平均点より上だな。化学は鬼門だったんだが、葉山が教えてくれたおかげで乗り切れた」


 鈴木くんが静かに微笑む。

 どうやらオレは二人の役に立てたみたい。

 オレの成績も前回の期末より良かったし、万々歳の結果だ。

 いや、オレの成績はどうでもいいんだよ。

 それより岩渕さんは――


「葉山くん!」


 答案を抱えて、岩渕さんが飛んでくる。


「良かったぁぁぁぁ、赤点回避! 世界史なんて見てこれ、平均点まで行っちゃった!」

「良かったね。岩渕さんが頑張った結果だよ」

「いやぁ、私だけじゃどうにもならなかったからね。あ、そうだ、鷹塚さんにもお礼言っとこう」


 上機嫌でスマホをいじる岩渕さんは、自撮りを始める。


「今夜は抱いていいぜ! ってメッセージ入れちゃおー」


 あの、オレはそういう事態になるのを回避したくて鷹塚さんと関わることになっちゃったんだけどね? 岩渕さんなりの冗談なんだけど、なんか複雑。でもすごく機嫌が良さそうだから、何も口を挟めないよ。

 まあオレも、以前ほど鷹塚さんのことを悪くは思っていないんだけどさ。


「お、返信早っ」


 岩渕さんが言う。

 オレも気になって、ラインのグループを開いてしまう。


『とりあえず、おつかれ』

『葉山くんも一緒なら抱いてあげるよ』

【おっけ】

【一緒に楽しもうね♡】


「なんか二人さぁ、悪ノリが過ぎない……?」

「え、そうかな?」


 首を傾げる岩渕さん。

 鷹塚さんの家での勉強合宿は、あのあとも連日行われたわけで、岩渕さんと鷹塚さんの関係性はもはや「去年体育の時間で同じだった顔見知り」から友達へとランクアップしちゃったみたい。

 オレ、ひょっとして墓穴掘っちゃった……?







______________

読んでいただき、ありがとうございます!


お話は終盤に入ってまいります。


気に入っていただけましたら、「作品のフォロー」と「星評価3つ」でぜひ応援よろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る