第47話 みんなでBBQ
その後もプールで存分に遊んだあと、少し早めの夕食になった。
レジャープール施設の隣には、バーベキュー場があった。必要な道具や食材を揃えてくれていて、手ぶらで利用できるのが魅力みたい。
休日ということもあり、お客でいっぱいだ。
「あっ、そっちのはまだあまり焼けてないから、もう少し待って。先にこっちのお肉食べちゃってね、もうすぐ焦げるから」
「あにきは本当こういうとき仕切りたがるよなー」
グリルを囲むオレたち。
その輪の中には、鷹塚さんの姿もあった。
ていうか、鷹塚さんの案内でここへ来たんだから、当たり前ではあるんだけど。
「でもさー、あたし、バーベキューは串で突き刺して食うイメージだったんだけど。ここは違うのな」
「鉄串だと危なくて海未が食べれないからね」
「まあいいじゃないか。むしろこうやって個別に焼いた方が食べやすいだろ」
鷹塚さんはアウトドアに慣れているのか、さっきから手際よく食材を焼いてくれる。
「美月、お肉ばかり食べすぎないようにね?」
「だってよ、海未。ピーマンもちゃんと食うんだぞー?」
「うみもおにくたべるのー」
火元から離れた位置に座る海未がぷんぷん怒る。
焼けたそばから、美月や海未が手にする紙皿にお肉や野菜を渡していくので、オレが食べる機会はなかなか訪れない。
でも、こういうのは育ち盛りの子に優先してあげたいからね。
「相変わらずキミは、いい兄貴だな」
鷹塚さんがオレの分を確保してくれていて、紙皿を渡してくれる。
「グリルの仕切りはぼくに任せて、キミもちゃんと食べろ」
「え、いいの?」
「家族サービスも結構だけどね、キミも休日を楽しむべきだよ」
「わかった。ありがとうね」
オレは椅子に腰掛け、バーベキューを食べる組に加入する。
鷹塚さんが焼いて、葉山兄妹がそれを食べるという不思議な構図ができあがった。
学校では中性的でクールなことでファンの多い鷹塚さんが、今だけは休日のお父さん感があって、ちょっと笑えてしまう。
そうして楽しくバーベキューを終えたあと、ゴミを片付けている最中。
「今日は、鷹塚さんのおかげで楽しかったよ」
「素直なキミは珍しいね」
「オレだって、恩知らずじゃないよ。妹たちの面倒も見てもらっちゃったしさ」
当の妹たちは、オレたちが借りているスペースの外にある芝生で追いかけっこをして遊んでいる。
「そうかな? キミの大事な妹たちをダシにして、キミに近づきたかっただけかもしれないよ?」
「そりゃオレもそう思ったけど、鷹塚さんってやっぱり面倒見いいから」
そしてオレは、プールでおばあさんから姉弟と間違われたときのことを思い出す。
照れくさそうでいて、どこか寂しそうだった鷹塚さんのことを。
「そこまで面倒見いいと、一人っ子が寂しくならないかなってお節介なこと思って」
「本当にお節介だね」
鷹塚さんは笑う。
「でも、心配には及ばないよ。たまに接するからこそ、楽しく思えることだってあるのさ。寂しくなんかないよ。そこだけは、いくらキミでも勘違いしてほしくないかな」
「ご、ごめん……勝手にわかったフリして」
「まあ、いいさ。お人好しで騙されやすいキミっぽくていいよ」
そう言って鷹塚さんは、ひとまとめにしたゴミ袋を手にして、バーベキュー場の中にあるゴミ捨て場へさっさと向かって行ってしまった。
鷹塚さんの本心はわかりにくいけれど、こうして本当はどう考えているか気になってしまうのは、オレの鷹塚さんへの警戒が薄まっているからなのかもしれない。
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