お嫁さんにしたいランキング一位のオレは、貞操逆転みたいな世界で王子様系イケメン女子に狙われています
佐波彗
プロローグ
うちの学校には、『王子様』がいる。
全校女子から圧倒的な支持を集めるその人は、オレが見かけるときはいつでも女子に囲まれていた。
「
「
「ああ……玲緒さまと同じ時代を生きてるだけで、生まれてよかったって思えるわ!」
ただ廊下を歩いているだけなのに、色んな女子から声を掛けられ、黄色い声援を浴び、ときには拝まれることだってある。
熱狂の中心にいるその人。
鷹塚玲緒さんは、同じ学年の有名人だった。
青のインナーカラーが目立つ、ショートヘアの黒髪。
真っ黒に澄んだ瞳を浮かべる目。
不健康というより、繊細さを感じさせる透き通るような白い肌。
凛としていて中性的な顔立ちは、イケメンアイドルと並んでも公開処刑してしまいそうなくらい綺麗だ。
そして、180センチに届こうかという長身。
歩いているだけで絵になる同級生は、今日も女子ファンに微笑みを振りまいている。
「ありがとう。ぼくもキミたちに会えて嬉しいよ」
たったそれだけで、女子は次々腰砕け状態になった。
鷹塚さんがいるだけで、そこがどこだろうと熱狂を生むライブ会場に様変わりする。
そんな綺麗な見た目をしていて、これだけ女子から騒がれたら、男子から嫉妬を向けられそうなものだ。
でも、鷹塚さんの場合は絶対そうはならない。
だって鷹塚さんは、女子だから。
どういうわけか男子の中では、「同性にモテるのならセーフ」という謎のルールがあるみたいで、たくさんの女の子を侍らせていようとも嫉妬の対象にはならないみたい。
「でもごめんね、今は急いでるから」
申し訳無さそうに、鷹塚さんが言う。
「あっ……」
そばにいた女子生徒の一人の顎先に指を添える鷹塚さん。
「また今度、落ち着いたところでね?」
「は、はいっ……」
のぼせるように、へなへなとその場に座り込んでしまう女子。
「またね」
爽やかに微笑み、手を振って何処かへ去っていく鷹塚さん。
鷹塚ファンの女子たちが残された空間は一瞬の静寂のあと、爆発的な黄色い歓声が湧き上がり、どれだけ鷹塚玲緒というイケメン女子が素晴らしいかお互いに意見を交換し合う場に様変わりする。
オレはそんな光景を、遠くから見てたんだけど。
「相変わらず、鷹塚さんの人気はすごいなぁ」
ついつい、そんなつぶやきが漏れてしまう。
うちの学校は男女共学なんだけど、こういうときは女子校に迷い込んじゃった気分になる。
女子たちほどじゃないけど、ああいう姿を見ちゃうと、鷹塚さんに尊敬の心を持ってしまう。オレもあんな優雅にカッコよく振る舞いたいなぁ、って。
そんな憧れの存在だったんだよ。
でも、昼休み中の人気のない校舎裏で、事件は起きた。
「
このオレが、あの鷹塚玲緒に迫られるなんて、誰が想像できただろう?
「ど、どうしてオレなの……?」
オレはたいして目立つわけでもないし、それに男子だ。
鷹塚さんが相手にするような、女の子じゃない――
「キミ以上に可愛いと思える女の子が他にいないからさ。キミが、『お嫁さんにしたいランキング』で一位に輝いたこととは関係なくね」
鷹塚さんの指先が、オレの顎先に触れる。
「そこらの女の子よりずっと可愛い顔に、甲斐甲斐しく献身的な態度……キミほど、ぼくのモノにしたいと思えた子はいないよ」
鷹塚さんの綺麗な顔が迫る。
このままだと、唇を奪われそうな勢いだ。
「観念して、ぼくのモノになりなよ」
「で、でも、オレには好きな人が……」
オレは、この誘惑に乗るわけにはいかない。
「関係ないよ。言っただろ? キミに本命がいようといまいと、ぼくはキミをモノにするって」
なんて強引な人なんだ……。
これが本当に、あの優雅で爽やかな学校のヒーローである『王子様』なのか?
「キミの全部、ぼくがもらってあげる」
どうして、こんなことになっちゃったんだろう?
ほんの数日前までは、オレはたんなるモブ生徒の一人で、校内の有名人である鷹塚さんとの接点なんてまったくなかったのに……。
思い返せば、こんなことになったきっかけは――
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