第8話 お姫様な方の妹
「
美月と海未は同じ部屋を使っている。
ただ、この姉妹は性格が正反対なこともあって、ちょっとお互い反りが合わないみたい。決して嫌い合ってるわけじゃないんだけどね。
「海未?」
もしかしてトイレで降りてくるのが遅れてるとか?
「にいに!」
「なんだ、いるじゃない。ご飯だよ?」
海未は、カーペットの床にペタリと座って絵本を広げていた。
日焼けを知らないような白い肌に、艷やかな長い黒髪。くりくりした黒い瞳をしている。
姉の美月とは対照的な、深窓のご令嬢みたいな楚々とした見た目と雰囲気だ。着ている服も、ゴシックというかなんというか、あんな感じのものばかり。おはようからお休みまでスポーツウェアな美月とはこの辺も趣味が違う。
「しってる。でも、にいにがくるのまってたの」
ニコニコしながら、ぱたりと絵本を閉じる海未。
「ん」
そのまま、オレに向かって両手を広げてくる。
「はいはい。抱っこして連れて行けってことだね」
「うん!」
仕方なくオレは、海未を抱きかかえて階段を降りる。
海未は四歳で保育園通い。ただ、とても甘えたがりだ。
海未はパッと見で可愛いとわかる見た目で、周囲の大人から甘やかされることが多い。そうしているうちにお姫様気質に開眼してしまったらしい。
黙っていても周囲が自分のために何かをしてくれる、という前提で動いているところがあって、今はいいけれど、大人になったときにこのままだと心配だ。
読んでいる絵本も、たいていはお姫様が主役のものばかり。自分と同じような人が活躍しているところが好きなのだろう。
美月が海未と同じくらいのときは、ゴロゴロコミックを読んでニヤニヤしていたから、その辺も正反対だ。
「にいに、ありがと」
「はいはい」
美月以上に手がかかる子ではあるんだけど、こうしてニコッと微笑まれてしまうと、何でも許せそうになってしまうところが危うい。
もっと厳しくしないととは思うんだけど……なかなか難しい。気分屋だから、機嫌を損ねると大泣きするし、泣き止んでもらうのに時間が掛かっちゃうから。
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