第38話 センスと猛級【人造魔生】

 ───数分が経っていた


 センスから即座に離れた魔者【ルジール・ジャウロ】は焦っていたのだ。


 手駒にした人造魔生アーシャルがここまで減るとは予想もしていなかった。


 長い期間と人間ざいりょうをかけてようやく実用までに辿り着いた貴重な物を失ってしまったのだ。


 だが、未知の力の正体を確認しなければ、計画に支障をきたすのは間違いなかった。それを優先した。


 だが、その焦りで失念していたのだ──人造魔生アーシャルの持ち主相手に、自分の力で通じるのか考慮するとことを……。



人造魔生アーシャルを消したこと必ず後悔させてやるぞ!」



 ルジールは相手を葬ることを考えて、一直線に未知の力の元──レオリス・グランディア、ラシリア・リンスレット・エルダール……そして、その2人の保護を受けているハルアの元へと。




 ◇🔹◇🔹◇



 ──人造魔生アーシャルとの戦いを開始しているセンスは──


「何なんだよ魔生コイツ! ほんと丈夫すぎんだろ! ほとんど攻撃が通らないじゃないか! 面倒くせーなぁ! もう!」


 という言葉だけで片付けてしまうセンス……。簡単に言うだけはあり、猛級相手でも余裕を見せていた。


 1体目は象で、もう1体はゴリラの姿。

 両方とも黒い靄を出して目の前に立ち塞がっていた。

 

 早く撃破してハルアの元へと向かいたかったが、その丈夫さに足を止めざるを得なかった。



(……普通に光魔法を収束させるだけじゃあダメージは通らないか……。見る限り、アイツらの属性は闇だよな……見た目だけど……。まぁ、そういうことにしよう。だとしたら、最大限に光魔法を使わないといけないか……)


 そう判断したセンスは全身に魔力を行き渡らせた。


 それに伴い、額の三日月マークと各指先、足に伸びる線は純白の光を放っていた。


 そしてその純白は、光の衣と変わり、額の三日月は、具現化してその形をティアラへと変化させていた。センスは構えると、右足を力強く踏み切った!



 最初のターゲットはゴリラの魔生であった。

 10メルト程離れていた距離は瞬時になくなり、その懐へと入っていた。



 体勢を低くしたその右手には、光の剣を握り、下弦から上弦へと振り上げていた。


 剣は魔生に深い傷を与え、大量の血がしぶきをあげさせた!


 攻撃によろめきながらも両腕を大きく広げ、センスを潰す様に打ち合わせた。

 だが、上体を大きく逸らし、それを躱したセンスの両手には剣が出現していた。



 そして──


 

「今度はちゃんと死ねよ……。月華ゲッカ!」



 静かに発すると、光の剣をクロスする様に走らせていた。

 それに引き裂かれた魔生は、煙のように灰になると、センスが纏う光の衣に当てられ、キラキラと舞い散っていった。



 もう1体の象の魔生はこの間に、その体型には似つかわしくないほどの速さでセンスに迫り、鼻先の刃を振り下ろしていた。


 

 だが──


 

 両手に持った剣により、鼻を刃ごと切り刻まれ、胴体に蹴りを入れられた魔生は後方に大きく飛ばされた! 

 

 これを追撃する様にセンスはすぐに追いつき、光の衣の全魔力を剣に宿し1本にまとめ──


 

「お前も消えろ。月災ゲッサイ!」



 それと同時に真っ二つに切り裂き、光の熱で一気に蒸発させたのだ。

 2体を消し去った後、1人呟いていた。



「……確かに、その辺りの魔生に比べたら雲泥の差だな……。学生どころか、そこらの冒険者じゃあ歯が立たないだろうな……。オレが【光の衣ガライト】まで使うなんてな……。くそ! 早くハルアのとこに行かないと!」


 

 センスはそう言うと、ルジールとの距離を埋める様に、光の衣ガライトを展開すると一気に走る始めたのだった。

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