第22話 引っ掛かりと違和感
俺達は翌日、日が上がる少し前、──5時頃に二頭引きの乗合馬車に乗り出発した。
朝が早い割には、15人ほど乗れる乗合馬車は満員だった。目的地に向かうまでに幾つかの町や村に寄るらしく、そこに向かう人達と一緒になっていた。
「なぁ、アーク。俺達はどのくらいでラームル湖まで着くか分かるか?」
「なんだ、お前聞いてなかったのかぁ? 御者のおじさんが言ってただろう……。『休憩を入れながら大体8時間くらい』ってさ。」
──そう言われるとそんな気がするよーな……。と思いながらミスティに目を向けると、外を見ながらルールウとリメルと楽しそうに話をしていた。
(よかった……。ルールウは最初、ぎこちなかったけど、変な空気にならなくてさ)
その心を見透かしたように、アークは笑顔で言ってきた。
「よかったな。ハルア。3人とも上手くやれそうじゃないか」
「ああ、そうだな。一時はどうなるかと思ったけどな。ミスティも人界は初めてみたいだから、このゆっくりとした遠征も悪くないな」
「でもあまり油断するなよ。討伐対象は一番低級といっても
「それなんだけどさ、魔生って一番低い物のことだよな? 後は何がいたっけ?」
「あのなぁ。それは……」
と言いかけた時に、俺の左隣りのミスティを挟んで座るルールウが呆れたように口を開いた。
「あのねぇ……ハルア。あなたはそれでよくルーメル入ろうってなったよね? 最低限の
「そだねー。本当に呆れるよね……」
ルールウに続きリメルも呆れ気味に言ってきた。ミスティは外に夢中で聞いていなかった。
「悪かったよ……。魔者に関しては、魔神と魔王、魔族くらいは分かるけど、あとは他を一括りにしてたから……。だからさ、教えてくれよ?」
俺は謝りながら聞いた。ルールウはため息混じりに説明してくれた。
「まず、ハルアがさっき言った、魔神、魔王、魔族の位置付けは言った通りだけど、その下には高位魔獣と妖魔って言われる言葉を喋る物と、後は危険度を上級から低級に振り分けされる
そう丁寧に説明してくれたルールウは、──分かった? と聞いてきた。
「分かったよ。で、今向かってる兎角ってのは魔生になるんだよな?」
「そだよ。フィアさんが言ってた通りなら、魔生の中でも低級の分類だから、討伐するのは難しくないと思うよ」
そう言うルールウにアークは改めて、「油断はダメだぞ!」と返してきた。
それに続くようにリメルも同意していたが、ミスティは相変わらず外を見ている。
それを横目に俺は自分にも言い聞かせるように口に出した。
「そうだな。低級に油断せずにいこうか……。でも、それ以上にフィアさんが帰り際に言ってた『奪い合いも禁止されてないから』ていうのが気にかかるけどなぁ」
「それに関しては、俺も気になってたんだよ。禁止されてないという事は、奪い合いも可能だという事だ。つまり、俺達は他の学生達とも戦わないといけなくなる可能性がある訳だよ……」
アークの言葉にルールウとリメル、そしていつの間にか、途中から話を聞いていたミスティが、互いに頷きその可能性を踏まえての覚悟を決めた。
「フィアさんが言うには他の学生達もこの依頼を受けたらしいからな。気を引き締めて行くぞ!」
そう気合を入れる様にアークは声を上げた。
だけど俺には少しの引っ掛かりがあった。
フィアさんが修了したのは8年前で……。その記憶はハッキリし過ぎていた。
確かに記憶力がいいと言えばそうだろうけど、何か違和感を感じる……。
『討伐系はよした方がいい』と言いつつも、俺達が討伐を受けると決めてフィアさんに言った時も、反対どころかこの討伐の話をしてきた。
しかも、遠征という新人には早過ぎる依頼を……。
嫌な予感はどんどん増していく……。
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