第21話 【ルーメル】学生ギルド⑤

「それじゃあ討伐を受けようと思いますが、何か俺達が出来そうな依頼は有りますか?」


「そうだなぁ……討伐かぁ……あっ! 良いのがあるよ! 私がにもあった恒例の討伐及び採集依頼が!」


 その言葉に俺達はお姉さんの顔に視線を集めた。

 それに気付き胸を張り言った。


「そうだよぉ〜。私はこのルーメルの修了生だよ。まぁ課程を終えたのは10歳の時だから8年前だけどねぇ」


「という事は、入校時は8歳!!!!?」

と俺は驚きのあまり大声を出してしまった。


「ちなみに、私の隣にいるアミザも2歳年上だけど同期生だよ」


「もう! 何を話してるのフィア!! 依頼の話でしょ? 早く教えてあげなよ」


 目を細め猫獣族のお姉さんの尻尾を掴むと話を進める様に言っていた。


 その尻尾を掴まれたフィアさんは「ひぁッ!!」と小さく声を出して、「──もう! 尻尾はダメだよぉ〜!! そこは敏感なの!!」とお尻を押さえながら言っていた。


 ──敏感なんだ……



 ドキドキしながら思ってしまった。


 それが分かったのか、ミスティとルールウ、リメルが俺をじっと見ている。


 アークはため息をつき依頼の話を聞き始めた。


「その依頼というのはどんな内容なんですか?」


「えっとね。このスイールから北東にラームル湖があるのは知ってるよね? で、その横に森林が広がってると思うけど、そこで、低級魔生の〈兎角とかく〉がいるの。兎角っていうのはまんまなんだけど、角の生えたウサギなのよ。その討伐及び角の人数分の採集ね。魔力はないから魔法攻撃はしてこないし、新人向きに用意されてて、ひとグループ一回きりの依頼なのよ。でも、ここから200キロくらい離れてるからね」


「それじゃあ早速遠征ってことになるのですね」


「そうなるわね。だからさっき話した、運命記録機フェイダーを渡すわね。あと、遠征の冒険者用の簡易結界テントハウスを1人ひとつずつ渡すわね。でもテントは2、3人は入れるから使い方は任せるわ。それと、このテントはルーメルからの支給だから返さなくて良いわよ。報酬は30万ゴールドね」


 その報酬額が依頼内容と比較して、高いのか安いのか俺達には全く分からない。


(普通に暮らせば、ひと月20万ゴールドあれば暮らしていける金額だからなぁ。それを人数分で分けるから、1人6万くらいか……。まぁ採集した角も買い取ってくれるみたいだし、妥当なのかもな)


 そんなことを考えていると、リメルが「その報酬額って妥当なんですか?」と聞いていた。フィアさんはそれに答えてくれた。


「そうねぇ……。難しい依頼じゃない割には良い方だと思うわよ。まぁこの依頼は特別だから、ルーメルが補助金を出してるからね。一般の冒険者ギルドでこのくらいの依頼ならこの半額くらいだと思うよわ」


「冒険者ギルドは割と安めなんですか?」

 その俺の問いにフィアさんは説明してくれた。


「一般の冒険者だったら、これくらいの依頼なら1人でもこなすからねぇ〜」


「じゃぁそのくらいのレベルの依頼ってこと?」


「そうだよぉ〜。だからって油断したらいけないからねぇ〜!」


「ありがとうございますフィアさん。十分に気をつけて行きます」


 アークがそう返事を返し、俺達は互いに頷き、確認を取ると、明日の早朝に出発することが決まった。


 その後、ギルドを出る俺達の背中を見送りながら、フィアさんは気になることを言った。


「あと、他の新人達の中にも向かったグループがあるからねぇ〜。採集アイテムの奪い合いも禁止されてないから気をつけてねッ!」


 そう言われると、何だか嫌な予感が湧き上がる。

 そんな事を考えなら、それぞれ帰路に着いた。

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