第20話 【ルーメル】学生ギルド④

 ルールウの恐ろしい耐性のことを考えているとは知らず、アークと落ち着きを取り戻したルールウが、「──依頼を探そ!」と俺達に声を掛け、ギルド受付に行くことにした。


 受付のカウンターには3人の受付嬢が立ち、学生達の対応していた。

  

 その内の1人、恐らく猫獣族ねこじゅうぞくだと思う黒猫っぽいお姉さんの前に行くと、アークが口を開いた。

 

「俺達は昨日入校した者なんだけど、どんな依頼を受ければいいか教えてくれませんか? 新人にも受け易いものがあればお願いしたいのですが……」


「そっかそっか! じゃあ、あまり討伐系はよした方が良いのかなぁ。う〜ん……そうだなぁ。採取・採集系は有るけど、あまりポイントは貯められないし……」


 頬に人差し指を当てながら、考えてくれているお姉さんから〈ポイント〉という言葉が出て、思い出した俺はポイントについて聞いてみた。


「あの、そのポイントの事についてなんですけど、修了までどのくらいのポイントを貯めれば良いのか教えて欲しいんだけど……」


「あら? 聞いてなかったの? 普通は昨日の入校時に説明されるんだけど……」


 そう疑問を浮かべるお姉さんに隣にいた別のお姉さんが駆け寄り耳元で何かを言っていた。


 すると気付いた様に「あー、そうだそうだ!」と手を叩き俺達に向かい説明してくれた。

 

「そういえば昨日、イリイリがルミナとセンスちゃんとかゼシアス教官その他を床に沈めたんだよねぇ〜」


 そう言われ、俺は昨日の適性診断の時を思い出していた。

 恐らく『イリイリ』とはイリス・メルサラーク教官の事だと想像がついた。アーク達も何とも言えない表情をしていたので俺と同じ様に思い出したらしい。


 ミスティは何のことかわからず疑問の表情をしていた。なので、簡単に昨日のことを説明した。 


 自分が喚ばれる前に服を借りたセンスがそんなことになっていたことに驚いている様子だった。

 その俺の説明が終わったのを確認し、ポイントについて説明を始めてくれた。



「じゃあ説明するね! 君達は在籍するこの2年間で修了試験を受ける為に、3千ポイントを取得する必要があるの。依頼の内容にもよるけど、基本は1つの依頼につき、採取・採集系なら3ポイント、討伐系なら50ポイント、討伐及び採取・採集なら100ポイントって感じで貯めるのよ。1年間は360日だから、3ポイントを毎日こなしても3千ポイントには届かないから、1日複数こなすか、討伐以上の依頼もこなさないとダメだよ。でも討伐に至っては複数のメンバー編成がいるし、1日で片付かない方が殆どだし、無理に受ければ大怪我だけでは済まないからね。だから内容には気をつけてね。まぁあまりにも危険な依頼は学生ギルドには置いてないんだけど、何が起こるか分からないから」


 そう説明され、俺は天衣力はあるけど、纏召喚が使えないから、方針をよく考えないと厳しい状況にあると分かった。


 その表情を見られたんだろう、アークが──討伐は俺達と一緒に行こうな! と言ってくれた。本当に頼りになるよ。

 そして続けて受付のお姉さんにアークが聞いた。


「討伐依頼を受けたとして、1日で帰って来れない場合は座学の方はどうなるのですか?」


「それは問題ないわ。討伐に向かう前に、ギルドから戦闘をオートで記録する指輪型マジックアイテムの運命記録機フェイトレコーダー、略して〈フェイダー〉を渡すから。これは敵の殺意とか気配が近づいた時点で記録を始めるから。討伐を終えて、この記録を担当の教官に提出すれば座学内容と比較して免除できる物は免除になるから。まぁ免除できない物は学ぶ必要があるけどね〜。でも、ほとんど免除になると思うわよ。実戦の方が学ぶことが多いからね」


 それを聞き、アークは俺達に振り返ると「試しに簡単な討伐を受けようと思うけどどうだ?」と聞いてきた。ミスティもルールウもリメルも異義は無いみたいで、俺も頷き討伐を受ける方針で決まった。

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