第23話 怪しい人物
──ハルア達が出発した約5時間後
ルーメル学生ギルド──
「フィア、アミザ……。どうして学生のギルドに兎角討伐の依頼書があるの?」
そう聞いてきたのはあともう一人の受付者で、水色の腰まである
「どうしてって言われても……。キイラも知ってるでしょ? 新人依頼のこと? もうこのギルドで約3年間一緒に居るんだから。討伐って言ったらこれ勧めるでしょ?」
フィアは、──もう忘れないでよね! と言い、アミザも頷いていた。しかし、キイラは驚きと警戒を強めると2人に手を翳した。
キイラの手が光り、2人を包むと小さな音と共に何かが弾けた。
すると2人は何かに気付いた様に周囲に警戒を向けた。
「私とアミザ……。魔法をかけられてたのね……。兎角討伐は学生ギルドではなくて、一般の冒険者ギルドの依頼であって、決して新人向きの依頼ではないよね……。魔法も使う上、大きさの割に素早い厄介な中級以上の魔生……。この記憶操作のトリガーって何?」
フィアは汗を流しつつも、鋭い目つきでキイラに問いかけた。アミザも目を向け、その問いの答えを待っていた。
「ハッキリとは分からないけど、共通するのは【新人】【討伐】【遠征】の3つで、その言葉が発せられた時に記憶操作がかかる様にしてたのだと思うわ。多分だけど力をつける前の新人を排除しようとしたのだと……。しかも、積極的に討伐依頼を受け、能力を向上させる可能性がある学生達をピンポイントに……」
そう口にするキイラは、フィアとアミザに──何か心当たりがある者は居なかった? と問いかけた。
その問いにフィアは記憶を巡らせ、とある1人の姿を思い浮かべた。
それは──……
「──ひとり居るわ……。目深にフードを被った新人と言っていた男の子が……。その子に会った時になんか頭がボーッとしたのを覚えてるわ。でも、その時は新人の対応で追われてたからだと思ってたけど、今思えば明らかに違った感覚だった様な気がするわ……」
その答えに、アミザも頷き自分もそうだと同意した。
「恐らくだけど、きっとそいつだと思うわ。人間ではないと思う……」
「それじゃあ、あれは魔者ってことなの?」
フィアのその問いかけに、キイラは静かに頷きアミザにも視線を向けた。
その視線にアミザはその重大さを理解し、直ちに依頼を受けた新人に救援を送ろうと言った。
「もちろん、救援は送らなくちゃいけないけど、フィアとアミザに魔法をかけた奴も来る可能性が高いわ。条件はあるにしろ、歴代最年少でルーメルの過程を修了したフィアに、耐性の高いアミザに魔法をかける奴よ……。普通じゃないわ……。それに、【
この話に、フィアとアミザは頷くと、自分達が向かうと言った。
それに釘を刺す様にキイラは────
「あなた達は魔法をかけられたでしょ! またかけられる可能性がないとは言えないわ!」
「大丈夫。今度は私もアミザも油断しないから。ギルド受付になってから気が緩んでたんだと思う」
「そうね……。気が緩みすぎてたね。うちも今度はかからないし、どんな魔法にも対応してみせるよ。それに、うちらだったら【
「魔力で特殊強化された馬ね……。確かに魔星馬を使えば早めに追いつけはするけど、本当に大丈夫なの?」
その問いに2人は頷くと、直ぐに準備を開始しようと動いた。それを見たキイラは教官に報告に向かおうとした。
だがその時、突然現れた者に阻まれた。
白銀の
その姿を見たキイラは咄嗟に声を上げた。
「センスちゃん!? 何でここにいるの!?」
「そんなに驚かなくてもいいだろ……。たまたま新人の様子を見たいなって思って来ただけだよ。それに、2人仲良くなった奴がいてな! で、何でこんなに騒いでるんだよ? 何かあったか?」
フィア、アミザ、キイラは互いに顔を見合わせて、この騒ぎの経緯を話した。それを聞いたセンスはその最後に依頼を受けた5人の内2人がオレと仲良くなった奴だ。と話すと、自分も向かうと言った。
「そりゃあセンスちゃんが来てくれれば心強いけど、1人でそれを決めていいの?
「結局、教官の誰かは行かなきゃいけなくなるだろう? それなら、2人と知り合ったオレが行くのがいいと思うし、せっかく出来た友だちを助けに行くのは当然だろ! だから、オレは行くぞ! キイラ姉はそのまま上に報告してくれ! フィア姉! アミザ姉!すぐ向かうぞ!!」
そうセンスに促され、即座に準備をすると、ルーメル所有の魔星馬を駆り出し、新人達の向かった森へと急いだのだった。
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