第59話 これから

 今、目の前にはセンスとラシリアが対峙している。


 センスは構え、ラシリアは右手をくいくいっと動かし、かかって来いと言わんばかりに挑発している。


 これに応えるようにセンスは地面を抉らせるほど踏み切った! 


 しかし、流石に真正面からは攻撃しないのか、ラシリアの前で急旋回し、後方に回り込みながら視認できるほどの獣我力を練り上げ、熊の手の様な剛腕を創ると、それを思いっきり突き出す!


 ──が、ラシリアは空中を舞うようにセンスの後ろに回り込み──。

 センスの背中に左手の人差し指を軽く触れさせて言っている。

 

「スピードはまぁまぁあるけど、隙だらけね……、はじけ──」


 ラシリアの言葉の瞬間!

 センスが纏っていた能力、確か──、【天満月あまみつつき】だとかを強制解除した上にそのまま吹き飛ばしていた!!


 そしてそのまま一直線に木ぶつかる──、と思いきや、急な方向転換により、センスは叫び声と一緒に俺に向かって来た。

 

「うわわわわわわぁぁああ!?」

「──ぐぁぁああ……う、ぶぅ!?」


 ──ぐ、苦しい……。い、息がぁ……! このままではやばいと思い、目の前のセンスの腰あたりを持ち押し除けた。その際センスは──、「──ひゃいっ!」と可愛い声を出していた。


「──がぁぁ……窒息死するとこだったーー!」

「ハ、ハルア! く、くすぐったいぞ! 離してくれよ!」

「ああ、わりぃ……」

 

 そう言いセンスを横に退けると、ラシリアに怒りをぶつけた。

「ラシリア! お前わざとやっただろ!? なんで真っすぐから急に曲がるんだよ!」


「ふぅ〜んふふふ。良かったじゃない?センスちゃんの巨乳が体感できてふふふ!」


 それは否定しないが、しかしそれとこれとは別だ。

 

「打ちどころが悪かったら大怪我だぞ!」

「だからセンスちゃんをハルアに向けて飛ばしたのよ。女の子に怪我させたらいけないからね!」

「──って違ーーーう!!!! 俺がだよ! センスは強化してるから大丈夫だろうけど、俺は無防備だぞ!!!?」

「でも大丈夫だったじゃな〜い」


 この悪気の全く感じられないラシリアの言葉にさらに怒りを覚えなくもないが、ここは我慢しよう。

 で、センスに向けて聞く。


「分かったかセンス? こう言うことだ……」

「──ああ分かったよ。まさか強制的に【天満月】を解除されるとは思わなかったからな……。こんなことされたらオレだって力が足りないことくらい分かるよ」

 

 センスは少ししょんぼりしながら言っている。

 俺はセンスの頭をぽんぽんと叩きながらラシリアき聞いていた。


「で、結局どうしようってんだよ?」

 俺の問いにラシリアはため息を吐き説明をレオリスに任せた。


「俺からの提案だ。この魔生大森林デトオーレストの両端には、時間と空間が歪んだ【外森がいしん領域イビル】てのがあるんだよ。こっちの一月ひとつきが、中での一年にあたる場所があるんだよ。そこでお前達を六ヶ月──、中での六年間鍛えてやろって考えたわけだ」


 レオリスの説明に、ミスティもセンスも、当然俺も驚いた。だけど、六ヶ月も向こう側を放置していいものかと考えた。


「──鍛えてくれるっての嬉しいけどよ、エメロードリングを奪われた状態を放ったらかしにして大丈夫なのかよ……?」


 俺の疑問にミスティもセンスも頷く。

 だが、これにラシリアが答える。


「さっきも言ったと思うけど、いくら焦っても今のあんた達じゃどうにもならないわけ! 分かる? それにあれだけの【神力】の塊のエメロードリングをこの魔者側まで移動させる闇を構築するには、最低六ヶ月はかかるって事! それまでは、大きな行動はしないのは間違いないの! だったら、せっかくここまで来たんだから、その間に強くなろうってことなのよ!」


 ラシリアの胸を張った言いに、レオリスも続いた。


「その六ヶ月間で俺はお前に、剣術の基本と応用と、能力の使い方。んで、ラシリアからは神力の引き出し方を教えてもらえ!」


「そうそう! 私はハルアに神力の引き出し方を教えて、センスちゃんには神力変換を教える! そして、ミスティ! あなたには二つの力が混在しているから、分離し、調整し、両方使えるようにしてあげる!」


 ラシリアの混在する力の調整……? その言葉を聞き、俺は以前ラシリアに全裸に剥かれ施術されたことを思い出していた……。


(つまり──、ミスティも剥かれる……素っ裸に……)


 想像してしまった。やばい……。

 俺はこんな変態ではなかったはずなのに……!

 ラシリアに視線を向けると、すでにミスティを剥くことを考えているのか、怪しげに口元を緩めていた。


「で、お前らはそれでいいか?」

 レオリスが言う。

 俺はもちろん、頷く。ミスティもセンスも続いた。


「それじゃあ! 【外森がいしん領域イビル】に向かおうかしら!!」


 ラシリアはかなりウキウキしている。

 やっぱり楽しみなんだろうな剥くの……。


 俺達──、ミスティ、センス。そして、ラシリアにレオリスは【イビル】での六年間の鍛え直しをする為に、外界と断絶された世界へと向かったのだった。


 みんな、待っててくれ。

 ──アーク、ルールウ、リメル。

 エメロードリングを取り戻しに必ず帰るから!!


 俺はそう誓うと、長い修行へと足を踏み出した。



─────◇───◆───◆───◇─────

 


 ここまで読んで頂き有難うございます。

 ここで一部終了となります。


 また、一部終了に伴い、この、【俺の能力特性は女神〈仮〉てなに⁉️】のカクヨムでの連載を終了致します。


 ハルア達の戦い、冒険、葛藤などはまだまだ続きますが、それは別の場所で連載を考えています。


 その際、この話を、大幅改稿を行い新たなものとして創り上げようと思っております。

 これまで書かせていただいた中で、自分の力のなさを痛感しております。


 現在進行形で、他の作品も掲載しておりますが、PVの伸び悩みなどもあります。

 恐らく、自分の力の無さが生んだ結果だと感じております。

 

 改めて、ここまでお付き合い頂き有難うございました。



 この物語の先を少しお話しすると、ハルア、ミスティ、センスは六年間の修行を経て、驚異的に成長します。

 その六年間で、魔公爵や魔男爵の率いる《人間狩り》に遭遇したり、《人間牧場》の人々を助けたりと活躍していきます。


 そして、様々な経験を経た三人は再び人間域である《サイラムエリア》に帰ります。

 エメロードリング、魔者にくみする抗魔騎士団隊長相手に大暴れします。


 それらを解決した後は、魔者側へと旅に出ます。

 そして、この大陸の支配者である【魔王ガーブ・イルミスラ】の支配からの解放を目指していきます。



 また別の場所で、ハルア達と出会えた時はその行く末を見守っていただけたら嬉しいです。


 皆様の有難うございました。

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俺の能力特性は女神〈仮〉てなに⁉️ ハクアイル @Hakuairu

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