第58話 魔生大森林《デトオーレスト》
透き通る声が響いた直後、周囲の
この状況に呆気に取られていると、その透き通る声は俺の名前を驚きの声で呼んだ。
「は? え!? ハルア!!? なんでここに居んのよ!?」
その後方からまたしても聞き覚えのある声で言ってきた。
「よっ! ハルア!!」
俺はつい先日お世話になっていた二人の名前を漏らした。
「──ラシリアにレオリス……なんで……」
「それを聞いたのはこっちよ!!」
ラシリアは左手は腰、右手は水平に広げると胸を張り言った。
「なんであんた達がこの
この言葉を聞いていたセンスは、ラシリアとレオリスの存在にも驚いてはいたが、それよりもこの場所がどこだったのかの方が勝った。
「そうじゃねーかって思ってたんだよ〜……」
「普通じゃなかったもんね……ここ……」
ミスティは続けると、俺も腰を地面に落として同様に口を開く。
「マジかよ……。やっぱそうかぁ〜。ラシリアが居るって事はそう言う事だよなぁ。言ってたもんな、
俺達の状況から何かを察したのか、後方のレオリスが、「向こうで何があったのか?」そう聞いてきたので、ここに至るまでの話を二人に伝えた。
──
────
──────……。
「なるほどな〜……。ハルアと森で会ったあの魔者達が現れて、しかも、抗魔騎士団隊長も魔者側で、エメロードリングを奪ったと……」
レオリスは少し考え続ける。
「──こりゃあその二人だけじゃなさそうだな……ラシリアはどう思う?」
岩の上に腰を落としているラシリアに聞いている。
二人に話をするために、俺以外のミスティ、センスも腰を下ろしていた。もちろんラシリアとレオリスもだ。それで、話を振られたラシリアは──、「そうねぇ〜……」と言い続けた。
「レオの言う通り、抗魔騎士団の中にまだ内通者がいそうね。いくら
ラシリアの答えに少しの疑問を持ち聞いていた。
「なぁ、ラシリア? なんで内通者は抗魔騎士団の中なんだよ? 考えたくはないけど、ルーメルの関係者や教官の可能性もあるんじゃねーのか?」
「ああ……それはないでしょ」
「なんでだよ?」
ラシリアより先に口を開いたのはレオリスだ。
「要はこう言う事だ。仮にルーメルの中に内通者が居たとしても、抗魔騎士団が制圧に来たら関係者や教官程度の力じゃあ対抗できねー。つまり、奪うことなんて出来ねーってことだ。だから、強い力を持っている奴ってことになる」
「最低でもあと一人はいるわ! 間違いなくね。それにしてもやってくれるわねぇ……エメロードリングを奪うとはね……」
「全くだな……」
ラシリアは口元に手を当て、レオリスは両腕を組み
この二人の言葉にセンスが立ち上がり言った。
「ならさっさと戻らねーと残りの奴らが姉貴達を襲ったら! それに早くエメロードリングを探さねーと神力が魔者の手完全に渡っちまう!」
センスは焦りで急かすような声を出す。
当然、幼馴染達を残した俺も焦りが出る。ミスティは焦る俺とセンスに落ち着く様に言ってくる。
俺達の焦りを見たラシリアは、組んだ足の上に肘をつき、両手で支える様に顎を乗せ言う。
「そこの女神ちゃんの言う通りよ。まぁ落ち着きなさいって……。恐らく当分の間は動かないと思うわよ」
ラシリアの落ち着きを払った言い方は、自然と俺とセンスを落ち着かせていた。
「なんで分かんだよ? 動かないってさ」
これに答えたのはレオリスだった。
「いいかァ、ハルア。エメロードリングは確かに【神力】の塊だ。だがそれ故に一瞬で遠くまでは運べん。なぜなら、膨大な【神力】を抑え込まないと、リングの力に押されその闇の空はすぐに力を失う。つまりだ、その闇の空には【神力】を抑え込む力と、運ぶ力の両方が必要となんるだよ」
「なら、その両方を兼ね備えてある闇の空だった可能性もあるだろ?」
「ああそれもないわね」
今度はラシリアが頭を振りながら続けている。
「エメロードリングはね、桁外れの【神力】を保有してるのよ。魔者が創り出した物くらいで長い時間は抑え込めないわ。この私でもアレをずっと抑え込むのなんて難しいわよ。それに、そう簡単には【神力】を抽出するのは無理。それだけプロテクトはしっかりしてる。だから、力を蓄えるまでは動かないと言うよりも動けないと思うわよ騎士達もね……多分向こうのどっかで隠れてるんじゃないかしら?」
「ラシリアの言う通りだぜ、ハルア。だからよ、ペリシアの姉ちゃん妹……センスっつったか? だから大丈夫だ。それにな、今のお前らが戻ったところで何も変わりゃぁしねーのよ」
俺はレオリスの言いたいことが分かっていた。
以前、俺が二人について行くと言った時に経験している──。
「レオリスが言いたい事は分かるよ。俺達が弱すぎるんだろ?」
「その通りだ。今のお前達じゃあ同じことの繰り返しだ」
これにうんうんと頷くラシリアの姿が分かる。
ミスティも理解してるのだろう、俯き気味ではあるが、唇を噛み締めている姿だ。
ただ分かってないのか、センスが──、「うちは
これにラシリアは、ため息を吐き立ち上がると、スカートの裾を
そして、センスに向けて言った。
「それじゃあ、センスちゃん。自分の弱さを実感してもらおうかしら。全力でかかってきなさい!」
当然言われたセンスはやるしかない。
「おもしれー! ハルアから聞いてたあんたの強さ! 見せてもらおうじゃねーか!」
俺は『やめた方がいいと思う……』と言いたかったが、多分やめないだろーな……。と考えて見届けることにした。
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