第57話 漆黒の空の向こう側
天空に消えゆくレギアを見ていたせいでハルアは、自分の体にも異変が起こっていたことに気づくのが遅れてしまった。
これに最初に気づいたのはミスティだ。
「──!? ハルア!? 体が光ってる!」
「──え!? 何で!?」
ハルアは自分の体を見やるが、この状況に頭の理解が追いついていなかった。
だがミスティは思いつくことを口にした。
「──ハルア! ラシリアさんから施術を受けたって言ってたよね? その影響じゃないの!?」
ミスティの言いにラシリアの言葉を思い出していた。『天衣力と神力が互いの邪魔をしている』と。
「確かに俺は天衣力と神力を持ってるらしいけど、何でそれが原因なんだ!?」
これに答えたのはペリシアだった。
「──このレギアの出現させた漆黒の闇は、恐らくだが、エメロードリングを──、神力が宿った物質を転送することが、できるらしい……。それを証明、する様に……神力の塊である、エメロードリングを取り込んだ。だから、ハルア君が神力持ちなら──」
ペリシアが言い終わる頃にはハルアの足は地を離れ、漆黒の闇へと向かい吸い込まれつつあった。
これを助けようとミスティも動くが、〈仮〉でも女神であり神力を操るミスティもその足場を失い吸い込まれつつあったのだ。
センスは二人をどうにか助けようとするが、今のセンスの姿はまずかった。
──神力経由で能力を増幅できる力。
これをすぐ発動できる様に備えていたのだ。つまり、ミスティ経由で神力を通していたセンスも、足場を失い空の闇へと向かい吸い込まれていたのだ。
「──な、なんだよ。うちもかよ!!」
ペリシアはどうにか体を動かし助けようとするが、当然大半を骨折している体では動くことは叶わない。
ペリシアは歯噛みしながら言った。
「──すまない……センス。体が動かないんだ!」
苦しそうな姉の表情を見たセンスは笑顔で返す。
「気にすんな! 姉貴! またすぐ戻ってくるよ!」
これに続きハルアとミスティが言う。
「ペリシアさん。俺達、必ず戻るから!」
「私も! ハルアとセンスと一緒に帰るから!」
それぞれ言うと、最後に口を揃える。
「「「──待ってて!!!」」」
そして三人は漆黒の闇の空へと消えていった。
「──戻ってこいよ、必ずな……」
ペリシアの声は、三人が消えていった空へと溶けた。
──……
────……
──────……
◇🔹◇🔹◇
この場所には闇を纏う広大な森が広がっている。
その向こうには人間が【
森の中からは、上級或いは猛級魔生が
──その中へ闇が降り落ちた。
大きな音を立て、降り落ちた場所からは男女三人の姿が確認できる。
「──つうぅぅ……。
銀髪の女性は言う。
「う〜……。どこだろうね……ここ?」
ウェーブがかった金髪の少女は続けた。
「分かんねーけど、周りからは魔生の気配が滅茶苦茶だ……」
黒髪を後頭部で結っている少年は答える。
──センス、ミスティ、ハルアはそれぞれ周囲を確認しながら言っている。
そしてハルアは嫌な汗をかきながら口にする。
「あ、あのさ……。俺が今感じてること言っていいか……?」
「ハルアよぉ……。それはうちも同じことを感じてるよ……ただ口にしたくないだけだ……」
センスが続く。
そして、ミスティが口走る。
「う〜……ものすっごい魔生に囲まれちゃってるよぉ〜」
「「だよなぁ〜。やっぱり囲まれてるよなぁぁぁ」」
ハルアとセンスの息ぴったりの言葉が響く。
そうなのだ。漆黒の闇の空へと吸い込まれたのだが、その先は森の上空へと出口が繋がっていた。三人は投げ出される形で、闇を纏いながら森のど真ん中へと降り落ちたのだ。
「──なぁ、ハルア。これどうするよぉ……。周りにいる魔生はどう考えても普通じゃねーよなぁ……?」
「そうだなぁ……。多分、猛級の
二人の会話を耳にしたミスティは、またしても口走る。
「──数十体いる感じだよぉ〜」
「「だよなぁ……」」
またしても二人が揃う。
だが続けてセンスがため息混じりに言う。
「──はぁ……どこまでできっかなぁ……。やるしか道はなさそうだよな……?」
ハルアも同じように言う。
「ああ……。やらねーと殺されるだけだしな……。でも、俺は残り時間もあまりないぞ……。多分全て倒すまでは持たねーよ」
「……その時は私がまた手伝って──」
ミスティがそう口を開こうとした時、センスが口を挟む。
「──そうしたいとこだが、恐らくそんな余裕はなさそうだぞ……。さっきよりますます魔生が増えてるからな……」
「──じゃあ……」
ミスティの言葉に応える様にハルアは口を開く。
「できる限りやるしかねーってことだよ! そのあとは──どうなっかなぁ!」
センスは続ける。
「後のことは! これをどうにかしてから考える!」
そう言い放つと、ハルアとセンスは跋扈する魔生に向けて踏み切ろうとした──……。
──その時……!
「何なのよぉー! もうぉ! この
ハルアの聞き覚えのある、透き通る声が響いた。
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