第16話 神人戦争③

 魔者との一連のやり取りが終わった後、ラシリアは改めて口を開き【神人戦争】によって半神人は消されるだろうと伝え、国王達は再び悪夢に引き戻された。

 

「お父様、これはもう防ぐ事は出来ません。私達が始めたことではありませんが、一部の同族の暴走のせいで、これからの未来に影を落としてしまいました……。恐らく、この戦争を期に神と天使は人と交わる事を禁止するでしょう。それに、この戦いは【愚戦ぐせん】として残り続けると思います。元々、神と天使の中には、人間に対してよくない感情を持つ者達もいます。このことで、人間を忌み嫌う者達も増えてくるでしょう。未来の人々は神天界からの助けを受けられなくなり、負の遺産を背負う事になるのです」


「確かにな……。この出来事で、後世の人間に苦しみを与えてしまうだろうな……。だが、ラシリア……お前の言う通りだとして、本当に我々にはどうすることも出来ないのか?」


 そう尋ねる国王に、ラシリアは──希望という意味合いでは有りますが、1つ方法が有ります。いえ、2つですね。と伝えた。


「それはどういう方法なのだ?」


 ラシリアは少し間を置いて──1つ目と言い、右手の人差し指を伸ばし、言葉を続けた。


「私は以前、10年程前に1人の青年と会いました。偶々たまたまではありますが、20人の魔者の集団と交戦していた時の事です。まだ、当時は能力もあまり高くはなかったせいで、割と危なく、その半分しか倒せずに6歳ながら死を覚悟しました……」


 と、遠い目をして話していた。


 それを耳にした国王は──ん!? 初耳だぞ! と窺える怒りの目つきで、当時、娘の事を頼んでいたアオグレイス大臣を睨んだ。


 その目つきに冷や汗をかきながら、大臣は心の底で(言わないって約束だったじゃないですかぁ!)と叫んでいた。


「ちょっと待て! ラシリア……。お前は6歳で魔者を10体も倒したのか!?」


 その返しに──面倒臭いなぁ。と言わんばかりに薄い目をして答えた。


「たかだか、中級くらいの魔者の集団よ……。私の汚点でしかないわ!」


「………………」


 ……言葉を失った。


「まぁそれはともかく、その時に一人の青年に助けられたの。彼は神天界の神で人界を見て回ってたそうなの。で、偶然やられそうになっていた私を助けてくれたのよ……。その時に彼は言ってたわ『この魔者が多い世界では、半神人きみたち純人間ジュアングは生きにくいだろうな……。私が力をつけて最高神として代われば、恩恵を降らす事が出来るのだがな……』って。でも、私は尋ねたの『神と天使の中には半神と純人間を嫌ってる者達もいるよね? あなたは嫌わないの?』でも彼はそれに対して、『確かに人間は自分勝手な者、欲深き者、それによって戦争などを起こす者もいる。だがそれは、神と天使とて同じ事だと思っている。全ての神と天使が必ずしも善とは限らないのだよ。間違うこともある。その都度、改めていけば良いのではないかと思う。それを考えてみると、一方的に嫌うという事はしたくはないし、しない。私はそうあるつもりだ』と」


 長々とそう説明されたはいいが、国王は我が子に対して疑問を呈した。

 

「ひとつ聞いていいかラシリアよ……。お前は6歳にしてその様な質問をしたのか? 不思議でいけないのだが……」


 その国王の言葉に答えたのはラシリアではなく、大臣であった。


「あの……国王様。ラシリア様はその……出来が良すぎてですね、教えた事は勿論、様々な文献を読み漁っておりまして、当時の王女様はすでにこの国の経済や世界の情勢など、私以上に詳しくなっておりまして……神との会話も難なく出来るかと……」


「……そ、そうか……」


 と短く言って、ラシリアに──続きを話してくれと促した。それにコクリと頷くと、再び話し始めた。


「その後、私は彼にお願いしたわ。あなたが最高神になっても、ならなくても『もし今後、魔者の脅威が迫った時には人々を助けて欲しい』と条件付きで……で、その条件が2つ目です」



「その条件とは何だ? ラシリアよ」



「それは私の創世魔法によって────」


 その続きを聞いた国王、大臣、副団長と他の者達は驚愕しながらも、後世へ残せる唯一の方法を実行する事を決めたのであった。

 

 そして、一部の半神人の進軍によって、神天界から忌諱きいされ、見放された結果、魔者がアルティミラを支配し、魔者優勢の世界が創られた。


 だが、ラシリアとの約束を守る様に、最高神となった青年、ラフィサリウスは【覚醒魔力アクシカル種子シード】を撒き、魔者に対抗するための手段を人界に降らせたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る