第15話 神人戦争②
「ラシリア!! なぜここに来た!」
国王ラキオ・
だが、彼女は聞く耳を持たずズカズカとキューブに近づいていた。
「王女様!! すぐに離れてください! いくら貴方の魔法でも、この魔者相手に確実に抑えることが出来ないかも知れません!」
副団長であるダルドは第一王女ラシリア・
「大丈夫よ。この魔法は相手の力に応じて強固になるから、魔神や魔王クラスじゃなきゃ破壊はできないわ! まぁ、そのクラスでも破るのには時間が掛かるでしょうけどね」
とんでもない事をさらりと言う。
周りが呆気に取られていると、視覚と声を出す手段だけ与えられた魔者が思い出したかのように言った。
「そうか……。貴様が半神人の稀代の天才にして変人のラシリア・R・エルダールか!」
ラシリアは魔者の発言にムッとしながら返した。
「魔者に変人なんて言われたくないわよ!!」
その会話に割り込むように国王が、変人と言われた我が子に声を掛けた。
「ラシリアよ……本当に大丈夫なのか? 我が娘の力を疑っているわけではないが、騎士1千500強を消す奴だぞ……それ程の力の持ち主を本当に封じられるものなのか?」
「……封じてるじゃない」
素っ気なく、少しキレ気味に返事をすると、父親である国王は──うっ……。と言うだけで、これ以上娘を怒らせないように黙ってしまった。
「そんなことはどうでもいいのよ。お父……いえ国王陛下。情けないことですが、魔者が言うように、この国ミレナザーダは神天界の怒りを買い、消されると思います。神と天使がこの様な愚行を許す訳がありませんから……」
ラシリアの口からその確定するだろう未来を告げられ、謁見の間には完全な静寂が訪れていた。
だが、国王だけが娘に対して問いかけていた。
「──もうどうすることも出来ないのか!? 今から直ちに追えば、まだ間に合うのではないのか?」
「無理だと思うわ……。もう、神天界の近くまで進軍してる様だから。それに、神と天使も気付いてるみたいだし……。きっとそこの魔者が空間に関する魔法を提供したのね。
その言葉にゆっくり答える様に魔者が口を開いた。
「──流石だよ……。やはり稀代の天才と言われるだけはあるな。そこまで分かっているということは、オレの居場所も把握しているのだろう?」
「そうね。このライツ大陸の最南端辺りかしら……」
「本当に貴様は優秀だな。だが、【
「確かに
その薄ら笑いを浮かべた怪しげな笑みを見せ、魔者を含め国王もその周囲も、背筋を冷たくしていた。
国王に至っては──ラシリアを怒らせてしまったのかぁ……。
アオグレイス大臣に至っては──王女がキレてるぅぅ。
副団長アブルス・ダルドは──ラシリア王女ってこんなにキレるものなのか!?
そして魔者は先の3人とは違う感覚を抱いていた。
稀代の天才と言われる王女が纏う圧倒的すぎる神力に本能が危険信号を出していたのだ。
(何だ!? この魔力……いや、神力か……。だが、この膨れ方は……。異常過ぎるぞ! ここまでの神力を保有している半神人がいるものなのか!? まずい、ほんの少しだけ繋がっているだけでも解る……この膨大な神力は危険すぎる!! 早く離脱しなければ……)
その生存本能ともいえる直感で離脱を試みるが拒絶された! 再度試すが何も変わらなかった。
「──無駄ですよ……。あなた如きの力ではどうすることも出来ませんよ。言ったでしょう? 魔神か魔王くらいでないと壊せないと……」
「……オレ如きだと……。半神人の分際で!!」
「何を言ってるの? あなたが自分で言ったんじゃない……『オレ如きなどただの使い捨て』って……。自分で言ったことくらい覚えててよね」
「貴様ァァァァァァ!!!!」
「うるさいわね……。もういいわ。これが私からのちょっとばかりの仕返しよ──」
「──
それを言うと同時に左手が光り出すと、閉じ込めたキューブが急激に圧縮し始め、鈍い音と共に空間が弾けた。
すると、そこには元々何も無かったかのように元通りになっていた。
「ラシリア……お前は何をしたのだ? 何も分からなかったぞ!?」
「見たままですよ、お父様。相手からは、この空間を離れられませんが、術者の私は強制的に引きちぎることが出来るのです。で、引きちぎられた相手はどうなると思いますか?」
それを想像した国王とその場の者は、背筋が寒くなるのを覚えた。
笑顔で──ああ、スッキリした! という王女に恐怖の視線を向けながら……。
────仕返しをされた魔者は言葉にならない程の叫び声を上げていた。
「がァァァァァァ!! あの王女めぇぇぇぇ!! オレの腕を!!」
空間を剥離された魔者の両腕は、肩の辺りから丸ごと引きちぎられていた。
大量の血を流していたが、何とか止血することができ、その命を繋ぎ止めていた。回復魔法は無効化され、自らの魔力で焼き止めるしかなかった。
だが、それにも大量の魔力を消費し、戦えるどころか、動くことすらも出来なくなっていた。
「……あの王女め! この借りは必ず返すぞ! ラシリア・R・エルダール!!」
この叫び声はラシリアには届かなかった。
──が、【魔人鬼ザディギアス・グラバジール】はラシリアに復讐を誓いその姿を消した……。
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