第17話 【ルーメル】学生ギルド①
朝が来た──
俺とミスティはぎこちなく朝食をとっていた。
朝食は俺が作り今度はミスティが片付けという感じで進んでいた。
お互い、目が合わせ難いという感じで朝食を済ませると、ミスティは片付けを始めた。半裸の状態を見たのは喚びだした時と2度目だ。
でも、状況が違っていた。
あの時は、周囲に他の学生もいたし全く想像もしていなかった。その上、白く
だが、今回はハッキリと見えてしまった。
確かに昨日も想像もしていなかったのだが、今回は気を付ければ回避出来たことだ。どう声を掛けようか考えていると、玄関の方から聞き慣れた呼び声が聞こえた。
間違いなくルールウ達だ。
俺はそれに便乗する様にミスティに声を掛けた。
「ミ、ミスティ。ルールウ達が来たみたいだから準備ができたら玄関に来いよ……!」
「……う、うん。すぐ片付けて行くよ」
よし! 何とか声を掛けられた! 本当にタイミングよく来てくれたよ! と感謝していたが、すぐにそれを否定する事になった。
「──なんか怪しい……」
そう最初に口を開いたのは目を細め、疑いの視線を向けてきたルールウだった。
それを面白そうに含み笑いをしているのはリメルだ。アークもいるが成り行きを見守っている。
「全然そんなことはないぞ! 至っていつも通りだよ!」
「いつも通りに見えない……」
「ふふっ。顔が違うよねー?」
「はぁ……ハルアは本当に分かりやすい……」
とアーク達が声を出した。
普通に玄関に向かい、いつも通りに出たはずなんだけど、どうらや声の感じが違ったらしい。
その上、顔が少し動揺している様に見えたみたいだ。
俺的には、問題なく出たはずなんだが、幼馴染はちょっとの変化で気がつく……。
──実に怖い………
「まぁ、ハルアが何をしたかはとりあえず置いといて、ミスティさんも来たことだしルーメルに向かうぞ!」
「そうだねー。また後から聞こうかなぁ?」
「後で何があったか教えてね?」
笑顔でそう聞いてくるルールウの口調に明らかに角があるな──なんか以前にも似た様な事があった感じがする……。
──よし! 今度は答えよう。
「事故だったんだよ。トイレを開けたらミスティがいてさ!」
そう答えた瞬間に目の前には平手が迫り、高い音と共に俺の頬は大きく波打っていた──痛い。
その平手をくらわせたのは、ルールウだった……
「変態! このバカぁ!!」
「あははは! あははは!!」
「……はぁ。そこは誤魔化せ……」
──そう言われた……。
ミスティを見ると顔を押さえてうずくまった。
──どうしろと! 俺は答えたよ! 答えるって難しいね……。
◇🔹◇🔹◇
なんだかんだあり、ルーメルに着いた。
それぞれ教室に分かれたが、俺達はまず最初に、昨日ミスティに服を貸してくれたラビットート教官の所へと借りた服を返しに行った。
教官の部屋に着き、当然ノックをし、返事があったからドアを開けた。が、そこには下半身は下着一枚で、上半身に至っては何も着用していない姿で迎えられた。
そしてミスティが提げている袋を見て教官が口を開いた。
「おっはよぉ! よく来たな!! 服を返しに来たのか?」
「!!!!? な、なんで服着てないんですかー!」
「!!!!」
自分の格好を気にも止めず対応してくれる教官につい大声を出してしまった。
ミスティは口を押さえて目を丸くしている。
次の瞬間には両手で俺の視界を塞いだ。その状態で、続けてミスティが声を出した。
「ラビットート教官! 服を着てから返事をして下さい!! 丸見えですよぉぉ!!?」
「別にオレは気にしないぞ! 見られて減るもんじゃないしな!」
「そういう問題じゃないですよぉぉぉ! 男の子もいるんですよ!!? 見てるこっちが恥ずかしくなりますぅ! だから、早く服を着て下さい!」
必死にそう言うミスティに、俺からは声しか聞こえない教官が──分かったよぉ。着るよ。なんか姉貴みたいなこと言うなぁ……。と短く言いごそごそすると、ようやく視界が戻ってきた。
「これでいいんだろう?」
少し膨れた顔でそう言ってきた。
ミスティはようやく手持ちの袋を教官に渡すと頭を下げてお礼を言った。
「まぁ。また、いつでも貸してやるからな! 困ったら来い! にしても、ミスティと言ったか? 服のセンスは中々良いじゃないか。オレも嫌いじゃないぞ!」
そう言われたミスティを改めて見てみると、上はゆったりとした少し厚めの空色の長袖シャツで、下は膝下辺りまでの紅い生地に、横に紫の線が入ったフレアスカート、足下は革製の茶色のブーツを履いていた。
「ありがとうございます。私はまあり外交的な性格じゃないですから……出来るだけ明るい色の服を着る様にしてるんです」
「そっか! そっか! 自分で認識してるんなら問題ないな! 何ならオレから服装のコーディネートのレッスンをしてやるぞ!!」
「いや……あの、ラビットート教官。俺達、これから授業だからそんな時間ないですよ。その件に関しては、またお願いします。ラビットート教官……」
そう返した俺に、ラビットート教官は不機嫌そうに頬を膨らませ言った。
「センスでいい! オレとお前達はあまり変わらないくらいの年齢だろ? それに、敬語なんて使わなくていい」
「いやぁ……でも、教官だし、教えてもらう側ですから……」
「オレがいいと言ってるからいいんだよ! ミスティもそれでいいからそう呼んでくれ!」
「まぁそれでいいのならそう呼ばせてもらいま……もらうよ」
「うん! じゃあ私もセンスさんって呼ばせてもらうね」
「さんもいらないから、呼び捨てでいい!」
「分かったよ、センス!」
「じゃあ、また何かあれば来るよ! センス!」
「おう!!」
それに満足した様で、腕組みして頷きながら満面の笑みで送り出してくれた。
ちょっと滞在が長くなった俺達は足早に教室へと向かう事にした。
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