第3話 能力測定①

 抗魔5大都市──【命都メイトサイラム】、【流麗都ルレイトウェルタ】、【古都コトイシュタニス】、【天都テントアルガ】、【光都コウトレジリア】がある。


 各都市には、【イーリア】の支部が置かれ、それぞれ独自の教育を行なっている。  


 その中の1つ、【命都サイラムエリア】の南東に位置する中規模程の街、スイールにあるイーリア・スイール支部【ルーメル】に、スイールはもちろん、周辺にある町、村より新入生110名が集まり入校した。



 ──そして、約2時間前。



 ルーメルでは新入生の適性を確認し、振り分ける為の適性診断・能力覚醒が行われようとしていた。


 適性力は、武術マールツ魔法マジック勇者ブレイブ獣幻ビスジョン召喚サモンがある。


  これらの能力の振り分けには神天界で生成された【天界エメロードリング】が使われる。


 このエメロードリングは通常、神天界じんてんかいにのみ存在するが、最高神であるラフィサリウスの指示により、人間達に渡されたのだ。

 

 そして、新入生は自らの振り分けをされる会場に集まっていた。


 ルーメルの敷地内には屋内外に訓練場が3ヶ所ずつあり、会場はその訓練場を縫う様に、木々に囲まれた煉瓦道を数分進んだ先にあった。


 ドーム状の白璧の建物は、110名が入っても十分な大きさをしており、木造の入口は3メルト程で、両開きの扉の両サイドには、扉と同じくらいはある石像がある。

 右側に神、左側には天使を模し、神聖な佇まいを醸し出していた。

 

 新入生は指定された席で、自分達の未来を左右するであろう振り分けを待っていた。


 その新入生達が囲む様に、ドーム中央には一段高くなった場所があり、その真ん中に5メルト程のリングが浮き、ゆっくりと回転していた。


 その横には、全身を黒で統一されたワンピースと、鍔の広い三角帽を被る20代半ばと思われる女性と、同じく黒で統一されたバトルスーツを着た明らかに筋骨隆々の50代半ば程の男性が立っていた。

 

「全員集まったな!! 俺の名はガルバ・ゼルディスだ。先ずはこのルーメルを選択した君たちの勇気と覚悟を認めよう!! ここで2年間基礎を学び、命都サイラムの本部機関【ライサ】に進める様に努力してくれ!!」

 

 最初にそう声を張り上げたのは、ガルバと名乗った筋骨隆々の男であった。

 外見を上げれば、黒髪の角刈りで、身長は隣のリングを基準に考えると、2メルトはあると思われる巨躯のいかにも武闘派といったところである。


 続けて言葉を発しようとしているのは、黒の三角帽を被り、透き通る様な真紅の長髪ロングヘアーを腰まで伸ばした女性である。

 先程のガルバと比べれば小柄に見えてしまうが、160センチ半ばの印象を受けるので低くなはない。


 また、ワンピースを着ているだけあり、体型は判りずらいが、胸部の膨らみはハッキリ判るくらいあり、そこから想像すると、スタイルの良さが窺える。

 

「こんにちは。私はイリス・メルサラークです。本来なら、この【ルーメル】の最高責任者である機関長もこの場に居るはずでしたが、【ライサ】に緊急招集されましたので、ご了承ください。それでこれから、皆さんには適性診断を受けてもらい、自らの適性に合ったクラスで、能力覚醒を行ってもらいます。皆さんもご存知と思いますが、適性力には武術、魔法、勇者、獣幻、召喚があります。ですが、1人ひとつの特性とは限りません。複数現れる場合があります。その場合は一番色濃く出たのがメインの特性となりますので、そのクラスで能力覚醒を行ってもらいます。また、その特性の特徴等もこれからの授業を進めていき理解してもらいます。これは、自分がどんな能力を使えるのかを把握し伸ばすためです。なので、先ずは適性を診るので4人ずつ前に出てきてもらい、このリングに手を翳して下さい」

 

 その言葉に従い新入生は順に前へと出始めたのだった。



 ◇🔹◇🔹◇



 新入生が順々にエメロードリングに向かっている。


 大凡4人の診断が終わるのに3分程かかり、俺まで約30分と言ったところだと思う。


 診断が終わった学生達は、それぞれ自分のクラスに分かれ席に着いていた。


 全体的にソワソワ感と緊張感が漂い、思い通りに分けられた人の嬉しい声や、全く別な所に分けられた人達の溜め息の混じる声などが、順番を待つ俺達をさらに緊張させていた。

 

 そして漸く、俺と一緒に入校に来た幼馴染の3人の名前が呼ばれた。


 腐れ縁というか親同士が仲が良かったみたいで、スイールにある互いの家もあまり離れてはなかった。

 そんな訳で小さい頃からよく遊んでいた。


 そういった中、俺達が8歳になる頃に、冒険者だった俺の両親が魔者の手により命を落とした。


 3人もその親も、俺のことを心配し、面倒もよく見てくれたお陰で、現在14になるまで成長できた。


 ──支えが合って俺がある……


 なのでこの先、俺の様な人を少しでも減らせればと考えて、ルーメルに入校を決めた。

 他の3人も似た様な理由で入校を決めたらしい。

 

 で、最初に呼ばれたのはアーク・リザーブ。


 赤髪短髪で、上下レザーの長袖長ズボンで、男の俺が見てもイケメン。

 沈着冷静で面倒見が良く、リーダーシップもある優秀な男だ。



 次に呼ばれたのは、リメル・イリーン。


 紫掛かった黒髪ボブで、袖口の広いブラウスとパンツスタイルであり、勝気な性格で物事をはっきりと言い、積極的にゴタゴタに関わるお節介屋でもある。



 その次は、ルールウ・アミファルカ。


 黒みを帯びた茶色の髪を、頸の辺りで束ねた腰までの長髪ロングヘアー


 服装は、鎖骨あたりが見え隠れするゆったりとしたパープルの長袖、白いスカートを履いている。

 明るい性格で、人当たりも良く気配りが出来る。

 ただ、怒ったらアークとリメルでさえも一歩引いた行動をとる。


 そして、最後に俺が呼ばれたみたいだった。




 ◇🔹◇🔹◇




 

「ハルア・イシュリア前に来なさい……」

 

 

 

 

「……ハルア・イシュリアっ!!」

 

 

 

 教室は静まり返り、名前を呼ばれた本人を待っていた。

 新入生達は辺りをキョロキョロと見回しながら、恐らく当人であろうと思われる人物に視線が集まっていた。


 少年は黒髪を後頭部あたりで短く結んでおり、レッドレザーの長袖とブラックパンツで、頬杖をついて何か考え事をしているようであった。


 当人からは気づく気配が全く感じられず、横に座っている同じ新入生に促されて、謝りながら急いでエメロードリングの元へと向かって行ったのであった。

 

 

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