第2話 世界のすがた

 【違法狩猟者いほうしゅりょうしゃ】──闇者ダーパスは魔者にも人間にも存在する。

 人魔戦争後からその存在が確認され始め、各地で人間を捕らえては魔者に引き渡すという事が行われていた。


 人間の闇者の一部は、魔都ガブラ以外の街に拠点を持ち、取り引きをしていた。

 なぜなら、魔都では奴隷以外の人間の立ち入りは、魔王ガーヴの命令により禁止されているからなのだ。


 奴隷以外の人間を引き入れた場合、引き入れた魔者と入って来た人間は、その場での処刑が許可されている。

 その為、魔都には自由に動ける一切の人間ははずなのだ。


 

 そして、魔者と人間の闇者【ダーパス】両者ともに敵対している人間側は、引き渡された者、捕らわれている人々を黙って見過ごしている訳ではなかった。


 魔者の支配が至っていない3割弱は抗魔5大都市として生命、自由を取り戻し、捕らえられた人間を救出する為に魔者に対抗するべく抗魔軍を設立し、支配侵攻に耐え戦力の増進・拡大・強化を続けていた。

 

 人間と魔者の戦いは長く続いている。


 現在から300年前、人間達の対抗・抵抗に魔者達は粛清すべく魔軍を出した。


 しかし、予想外の横槍が入ったのだ。


 三千年前、【神人戦争しんじんせんそう】により、人間を忌諱していた神天界じんてんかいが援軍を出したのである。


 この戦争は、人と神、或いは天使とのハーフである半神人ハゴット半天使ハージェル、そして一部の人間が発端となり引き起こされたものであった。


 将来的に残る、この【愚戦ぐせん】といわれる愚かな戦いにより、人間と神天界はたもとを分ち【欲深き罪人】と呼ぶ様になり、一切の関わりを無くしたのである。

 

 しかし、最高神が代わり、人間派と言われる者達が台頭して来た事により、ただ蹂躙されるだけであった人間側は、この介入によって、最小限の被害に抑えられた。


 だが今度は、この人間側への加勢で神天界の守りが薄くなり、これを逃すまいと魔軍は神天界に進軍したのだ。


 これにより、天魔戦争が始まり、未だに収束せず互い睨み合いが続いていた。


 この戦争状態により、神天軍及び魔軍の両者共、人間側への干渉があまり出来なくなっていた。

 

 この間、魔者の干渉が減ったのは良かったのだが、神・天使側からの助力も望み薄となった影響により、魔者優勢の世界ではこれまでの反抗に対して、全人間の奴隷化や抗魔都市への再粛清、破壊が強く言われ始めていた。



 人間は脆弱な存在で、半神人ハゴッド半天使ハージェルの子孫も少数ながら人間側にいる。


 だが、歳月を重ねるに連れて、この子孫達の力も段々と弱体化していった。


 魔者との力の差はどんどんと開き、戦争が始まれば粛清される事は時間の問題であった。

 

 しかし、戦争状態になる前、魔者側に粛清を再考させざるを得ない情報が入ってきたのである。

 

 それは、歴代最高の力を持つとされる、神天界の最上神ラフィサリウスが、魔者に対抗できる手段のひとつとして、人界に【覚醒魔力アクシカル種子シード】を撒いていたという事であった。

 

 これは、潜在才能者ポテレントが取り込めれば、能力開花が起こり適性に応じた能力を得るというものだった。


 この種子の存在により、状況が読めなくなった魔者は、戦争を思いとどまったのである。


 戦争を避けることができた人間側は、種子の力と相まって、対抗力を強め、現在までの300年弱、着実に戦力強化を進め、抗魔軍の後進育成の機関である、抗魔技専門機関こうまぎせんもんきかん【イーリア】を設立することもできたのである。


 適性のある者が、この【イーリア】の課程を終えれば、抗魔騎士団への入団も可能となり、修了証を得ることができる。


 その結果、冒険者になったとしても、大きな信頼の下、より良い仕事の依頼も任せてもらえる様になる。



 今年もさまざまな夢を描きながら──


 未来と希望を求めて、少年少女問わず、多数の候補生が入校を決めているのだった。

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