第34話 人間牧場

 ラシリアの説明は始まっていた。

 

 レオリスはハルアの自己紹介の【イシュリア】という名前にある人物の顔を思い浮かべていた。

 自分の恩人である人のことを……。


 そうとは知らずに、ハルアはラシリアの話を聞いていた。


「【人造魔生アーシャル】ていうのは、人為的に造られた魔生の事なのよ。魔王ガーヴが生み出した魔法である、擬似能力生成スウビリィションで人間の生命力と魂を魔力に近い【隷力】に変換して、これらを【魔薬】へと作り変えるの。やじりのような物を器にして、これを魔生に注入するのよ。そうする事で、能力値も通常の10倍以上になるの。まぁ元々の基本数値が低ければ大した上昇もしないから、アイツらは守岩壁の向こう側……魔生大森林デトオーレストに生息する上級を遥かに上回る猛級にそれを打って、手駒にしてるのよ」


 それを聞いたハルアは、またしても疑問を思い浮かべ、ラシリアに問いかけた。


「でも、おかしな話だよな……? 向こう側にしかいない猛級が何でこっちにいたのか? ってさ……。あんな物を見つからずに連れてくるとか、無理だろ……」


「そうね。確かにハルアの言う通りよ。普通に考えて無理なのよ……。でも、それをがあったら、このサイラムエリアの死活問題よ……。でも有るんだろうけど。まぁ私達にとっては大した問題じゃないけどねー」


「サイラムエリアは自分達には関係ないってことか? なんか他人事だよな……」


「人聞きの悪いことを言わないでくれる? 『大した問題じゃない』っていうのは、私達からすれば、ってことよ。あんな物に手間取ってたら魔族以上の者には対処できないわよ」


「──!? じゃあ、ラシリアとレオリスは魔族とかと戦ってるのか?」


「まぁ詳しく言えば最上級で、ね。最上級以上っていうのは、爵位を持った魔者たちね。とか造って人間を在庫って呼んでるわよ……。だから、私達はそれを少しずつ解放して回ってるの」


 牧場という言葉にハルアは怪訝そうな顔で思った言葉を口にしていた。


「何だよ……? その人間牧場って……在庫って何だよ……。そんなの奴隷というよりも、ただの消費物じゃねーかよ……」


「その通りよ。魔者側からすれば、脆弱ぜいじゃくな人間なんてただの消費物……いつでも取り替えが効く便利な道具なのよ。それを証明するように、擬似能力生成スウビリィションの実験体はもの人間達よ。失敗しても替がいるから……。しかも、その人体実験で、強制能力上昇薬、【魔玉】を創ったからね。まぁまだ試作品みたいでけど」


「──魔玉?? って何だ?」


「見た目は虹色の【飴】何だけど、これを魔者や人が摂取すると魔薬の様な作用が働いて、膨大な魔力を得るの。今のところ、効果は一時的だけどね。これが完成したら厄介だから、魔王から生成を任された、魔貴族とその工場を探してるんだけど、これがなかなか……」


 ハルアはラシリアの言葉に少し考え込むと、──俺も探すの手伝いたい! と言った。



 だが、ラシリアの答えは──ダメよ。のひと言だった。

 

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