第35話 二つの力

「何で『ダメ』なんだよ! 俺は沢山の人を助けたいって思ってるんだよ! 猛級に襲われて『もう死ぬ』と思った時に後悔したんだよ! 何も出来てないってさ!! だから……!」


 

 そのハルアの思いを聞いたラシリアが、「──あのねぇ……あなた──」と言おうとした時、ずっと黙っていたレオリスが口を開いていた。



「ハルア……。お前の思いは分かるし、理解は出来る。だがな……正直にいう──お前は弱すぎる。天衣力を感じるからお前は纏召喚テンサモンだろ? その能力をお前は使えるのか?」



 レオリスの問いに答えられずにいると、ラシリアから予想もしていなかった言葉を言われたのだ。



「ハルア……。私があなたを治療してる時に違和感を感じたの。あなたの中には本来、今のがあって、それがお互いの力を邪魔をしてるの………。1つは纏召喚の天衣力。あと1つは私のような【半神人ハゴット】と神が持っている【神力】。何で、神人戦争以来、人と交わる事を禁止した神の力がこの時代にあるのか分からないけど、その2つがぶつかり合っているのよ……」



 その言葉を言われたハルアは、訳が分からずラシリアに詳しい説明を求めたが、「──私も分からないって言ってるでしょ?」と返して、自分の分かる範囲を教えた。



「神力のことは言った通り分からないけど……。でも、なぜぶつかり合うことで能力が上手く使えないかは説明できるわ……」


 

 そう告げると、ラシリアは説明を始めた。


「適性能力っていうのはね、元々、神天界のラフィサリウスによって適性ある者が種子シードを取り込むことによって発現するのは知ってるわね? でも、これはなの。神の力が少しでもあると上手く作用しないのよ。でも、それを知らないあなたは、天界クリスタルで元々の適性である天衣力を発芽させたの。そうすると、今まで眠っていた神力が天衣力の目覚めによって刺激され、活動を始めた。結果、お互いが邪魔しあって上手く能力が使えない状態になったのよ」



「……その何で持っているか分からない【神力】の影響で纏召喚が使えないってことなのか? じゃあ俺はこの先、魔者のから人を助ける事も、能力を上げる事もできないってこと……なのか?」



「できないとは言ってないわ。ていうのは付け足すけどね。方法はあるわ。聞く?」



 そう言われて聞かない訳にはいかない。

 もし可能性があるのなら、その方法を選ぶに決まってる。ハルア自身そう強く思っていた。


 

「その方法教えてくれ!」



 ラシリアはその言葉を聞き「──まぁ、ハルアが何かする訳じゃないんだけどね」と言い説明した。



「私がハルアの中にある2つの力を表と裏に調整をかけるわ。簡単に言えば、今の状況は同じ舞台に両方の力が上がってる状態だから、それがぶつからないように表舞台と裏舞台に分ける」



「そんな事出来るのかよ……?」



出来るわ! どうする? やる?」



「ああ! やってくれ!」



 流れを聞いたレオリスは額に手を当てため息を吐きながら──。



「……ハルア。ラシリアに施術してもらえば、まともに戦える様にはなるだろうが、すぐに強くなる訳じゃないからな。だから、一緒に連れて行くという事はしない。それは理解しろ。それとだな……ラシリアの施術は──」



 何かレオリスが言おうしたが、『まともに戦える様になる』という言葉で、ハルアは頭がいっぱいで入ってこなかった。


 そして、ラシリアのキラキラとした表情を見落としてしまったのだ。



「では、説明するわね。神力にまだあなたの肉体は耐えられないから、表にするのは天衣力よ。神力は裏で封印っぽくなるからね。まぁ無くなる訳じゃないけど、使えはしないわ。あなたの成長次第だけど! でも、私の調整封印だからねぇ。私と同等くらいじゃないと解くのは無理よ。それじゃあ、開始するわ!」


 ラシリアを見つめながらハルアは全力で──



「──お願いするよ!」



 そう言ったが、ラシリアの口から出た言葉は──


 

「服! 脱ぎなさい!!」



「は……? はぁあ……!?」




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