第9話 実践測定②

 時間もないので俺たちはすぐに行動に移した。


 たが、見つかる物といえば、鉄、岩が大半を占め、鉄は人間の大きさに近い物ばかりで、とてもじゃないが壊せないので論外。


 しかも、岩に至っては大きな物が多いため、現状では壊せない物ばかりで断念。


 その上、目標にしていた木は、最初に見つけたものだけが極端に小さく、その後に見つけた木はというと、2、3メルトの人型で、割と丈夫で破壊に時間が掛かった。


 土は想像通り脆く、能力を使わなくても壊せる程度……。


 そして、あっという間に制限時間が過ぎ──終わった。色んな意味で……。



 測定を終えた俺とミスティは教官と学生達が騒いでいるアークの点数に目を疑った。


 アーク・リザーブ──破壊点数1341点、能力相性〈S〉と、とんでもない数字を出していた。

 

「リザーブ、お前は凄いな! 新人でこんな点数見た事ないぞ。今、訓練をしている先輩達の中にも、この初日の測定でこんな点数を出した者はいないぞ」


 教官はそう声を張っていうと、周りの学生達からも、「すげー!」「どんだけ優秀だよ!」「頼りになりそう!」と声が上がり、大騒ぎになっていた。

 アークはというと、少し疑問に思う所があるらしく、教官に質問していた。

 

「あの、ちょっといいですか? 確かにかなりの鉄人形アイアンゴーレム岩人形ロックゴーレムとか破壊したのですけど、ここまでの点数になるとは思えないのですが……」


 その疑問を聞き、教官は「──じゃあ内訳を見てみるかと」と言い、スクリーンに内訳を表示した。それを見ると、鉄50、岩50、木30、土1、そして、クリスタル1と表示されていた。


「そうか、クリスタルが入ってたんだなぁ。それでこの点数だったか……」


 その教官の独り言に、アークも俺達も「──え!? クリスタル!?」という声が上がった。それはそうだと思う。


 だって、最初に教官が言った説明に、クリスタルという言葉が無かったからだ。


 そりゃあ皆んな疑問に思うはずだ。それを聞いたアークが最初に口を開いた。


「あの……教官、クリスタルとはどういう事ですか? 最初の話には無かったと記憶しているのですが……」


「ああ……それはな、ここは普段から訓練場という事は言ったと思うが、その時に使うクリスタル人形ゴーレムが残ってたということだよ。このクリスタルの点数は1体500点になっているからな……片付けるのを忘れたんだろう」


「そういう事ですか……。確かに、1体なかなか壊れない物がありました。岩の色をしていたのでてっきり岩だと思ってました」


「それは多分、だいぶ以前から残ってたんだろうなぁ。それで、次第に土とか砂とかが付着して、そんな見た目になったんだろう」


 2人がそんな会話を普通に交わしていたので、他の学生から声が上がった。

 

「ところで、クリスタルって俺ら新人が壊せる様な物なんですか?」


 その問いに教官は、首と手を左右に振りながら──いやいや……。新人が壊すのは、ほぼ無理だぞ! と答えてくれた。


「基本的にここのクリスタルは、魔力で訓練用に強化された物だから、半年から一年くらい能力を鍛えて壊せるくらいだからな。だから、リザーブの基礎能力がそれだけ高いって事だよ」


 その言葉に、アークの点数を見た時と同様の騒めきが上がった。

 俺は俺で──やっぱりアークは凄いな。と感心していたが、自分の点数を忘れていた事を今更ながら思い出した。


 隣のミスティは点数を確認したらしく、目に見えて落ち込んでいた。


 それはそうだろうな……だって俺達は木と土で出来た人形ゴーレムしか壊せていない上に、大きな物はなかなか破壊できない。という事は、必然的に点数が下がる。


 で、その結果──


 破壊点数回──75点……


 鉄0、岩0、木15、土30だった。他の学生には表示されなかった内訳が表示されていた。


 どうやら、アークの内訳を表示した際に、俺達も同時に表示されたらしい……。

 その結果を目の当たりにした俺とミスティは、自分達が最下位だという事を認識させられた。

 

「ごめんなさい……。私の強化が低過ぎて……」


 と申し訳なしそうに謝ってきた。


 だけど、ミスティが責任を感じる事は無いと思う。全部、俺の責任だからな……。

 

「ミスティは悪く無いよ。俺が勝手に喚びだした訳だし。俺自身も能力低いからさ……。でも、頑張っていくしかないしな。だからさ──勝手な事でさ、一生になるだろうけど、一緒に協力してくれよ」


 そう口にすると、ミスティがあたふたし始めた。

 顔はみるみる内に赤くなる。


 視点が定まらないと言った感じで、目線は空中を泳いでいる、「──ん?」自分が言った言葉を再度思い出してみる……!?


「ち、違うぞ! その、のッ能力覚醒は一生に一回だからって意味だし! その意味で一生一緒にって事だしってえっとだな──」


「だ、大丈夫! 大丈夫? わ、分かってるから一生に一回だからね! だから、一生一緒なんだよね」

 

 ハルアとミスティが2人揃って訳の分からない状態になっていると、それに気付いた教官は、「──はぁ」とため息を吐き、2人の方に目をやり呆れ気味に言っていた。


「──何やってんだお前逹……」


 ハルアとミスティは顔を見合わせ慌てて教官の言葉に耳を傾けたのだった。


 

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