第10話 実践測定③

 教官は2人が視線を向けたのを確認すると続けた。


「2人とも何してるんだ? 自分達の点数は見たのか? 見てないなら早く確認しろよ。お前達2人の点数は…………な、なんだ凄いじゃ無いか! あ、相性がトリプルSなんてな! こ、こんなのは初めてだぞ!」


 どうやら教官は俺達の点数は見なかった事にしたいらしい……。なんか酷くないか? と思ってしまう。


 せめて触れてくれよ……。


 でも、その教官の言葉で、俺達は落ち着き、相性だけは良かった事に心の底から良かったと思った。

 これで相性も悪かったら目も当てられない……。

 その気持ちも知らずに、教官は淡々と話を進めていた。

 

「これで、今日やる事は全部終わりだ! 明日から本格的にルーメルでの生活が始まる訳だが、ただ普通に過ごしているだけじゃあ本部機関【ライサ】には行けないからな。課程修了までに規定の修了ポイントを貯める事になる。ポイントを稼ぐには、専用の学生ギルドがある、その依頼をこなしていき、ポイントを貯められる。規定ポイントに到達して、初めて修了試験を受けられるようになるから、頑張って貯めるように! 貯めることができなければ、ルーメルを辞めてもらう事になるから気をつけろ! その事を肝に銘じて各自、送ったアドバイスと自分の能力と向かい合えよ! それでは今日はお疲れ様! 解散だ!」


 そう解散の声が掛かり、各自帰路についた。


 でも、俺とミスティは──俺たちアドバイス無かったよな……。


 お互い顔を見合わせて確認したあと、ため息を吐いた。


「それにしても、修了ポイントかぁ……。2年間でどのくらい貯めないといけないんだろうな……。学生ギルドの依頼内容ってのもどんなもんなんだろうなぁ」


「……そうだね。どんな依頼があるのか分からないけど、こなせるものを選んでいかないといけないよね……」

 

 俺達は明日からのルーメルでの生活に不安を口にしていた。ポイントが貯められずに辞めるっということだけは避けたい訳だけど、やっぱり不安しかない。


 いつまでもそんな暗い事を思っている訳にもいかず、明日からの生活に集中するという思いで、さっさと家に戻ることを考えた。


「じぁ帰ろうか。ミスティ……」 


「うん……そうだね。帰って休養しないとね」


その会話に疑問を浮かべ、ミスティにその答えを聞こうとした時、アークが話しかけてきた。


「ハルア……。あまり点数のことについて落ち込むなよ。まだまだ、これからどうなるか分からないんだからさ。それに、相性がトリプルSなのは召喚サモンの中では他にいないしさ」


「まぁ、そうなんだけど相性だけで何とか出来るものでも無いだろう……。能力的には底辺だし……」


 その会話に割り込む様に、2人の少女の声が聞こえてきた。


「2人とも終わったのね。私達も今さっき終わったわよ」


「そうそう。私とリメルもほとんど同じくらいに終わったから、ハルアとアークの様子でも見に行こうって事で来たよー……ってその女の子誰??」


 ルールウは自分では気付いていない様だけど、俺の隣に居るミスティに気付いた時、声のトーンが低くなっていた。なんで低くなった? 


 と思っていたが、適性診断時のような、いらぬ疑いを掛けられない様にとりあえずスルー……スルー……。


 アークもそれに気付いた様だが、それには触れず会話を続けた。


「……2人とも結構早く終わったんだな? お前達の所からは結構は離れているとは思うけどさ」


 そう聞かれ、リメルとルールウ、2人の少女はそれぞれに自分達の事を話した。


「まぁ、勇者ブレイブのクラスは実技とかはなかったからスムーズだったの」


「私の魔法マジックのとこもそんな感じだよ。自分の属性魔法を発動させて、的に当てるみたいなものだったし……。でも、リメルは勇者の他に武術も発現したんだよね? なのに何かを倒す!! みたいなことは無かったの?」


「私の場合は副適性みたいなものだからだと思うよ」


 その会話に俺は──アークも纏召喚テンサモンの他に勇者の適性が出てたぞ。と、告げた。


「なんかアークはそんな感じがしてた! 私に至っては何で2つって感じだったけどね」


「だけど、私から言わせればリメルの副適性も違和感は無かったけどねぇ……。で、ハルアの方はどうだったの?」


 ルールウからそう聞かれると、ため息混じりに返事を返した。


「俺は纏召喚の1つだけだよ……。俺が2つの特性を持つ訳ないだろ?」


 自虐的に答えると、2人の少女は、──まぁ、そうだよねー。と口を揃えて言った。


 その返事に「そこはあまり同意するなよ……」と返すと、「ハルアから言ったんじゃない」とまたしても2人揃って言ってきた。


 やっぱり幼馴染だよな……。

 

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