第11話 住む場所

 幼馴染は色々と同じこと考えてしまうものだ……。


 そう思っていると、次はルールウだけが口を開いた。


「ねぇ。さっきの続きだけど、その娘だれ? ひょっとして同じ纏召喚テンサモンの学生?」


 その俺に向けられた疑問の声は低く、ちょっと怖い……。

 それに答えようとした時、先に口を開いたのは俺の横にいたアークだった。


「この娘ミスティさんって言うんだよ。学生じゃなくてハルアが喚んだ纏召喚の女神さんだよ。で、俺達と同じ14歳だよ」


 その言葉を聞いてルールウとリメルは驚きの声を上げ、最初にルールウがハルアに尋ねた。


「それじゃあ、ハルアが『纏えない召喚者サモナー』って言われてた人ってこと?」


「何でそんな話しを知ってるんだよ!? まだ終わってから時間なんて経ってないぞ!?」


「でも、なんかさっき召喚の能力測定が終わったっぽい人が大声で話してて、それを聞いたんだけど……」


 その口の軽い奴の事を複雑な気分で話してくれたのはリメルで、俺の肩に手を乗せ……


「──有名になれたじゃない!」と言ってきた。


「……あのなぁ、そんなんで有名になってもどうしようもないだろうぉ……」


 それを見ていたアークは、──2人とも、ハルアは気にしてるからそれ以上言うなよ……。と言葉を掛けてくれた。

 でも、咄嗟に気付いたアークがミスティに向かい慌てて言った。


「ミスティさん。決して君を否定している訳じゃないんだ」

「大丈夫ですよ、そんなこと思ってないですから。それと、私は見習いなんですけど……」


 それを聞いた2人は、〈見習い〉と言う言葉に引っ掛かりはしたみたいだが、それ以上は追求しないでいてくれた。


 でも、ルールウは1つの疑問を口にした。


 それは、俺が思い浮かべていた疑問と同じだった。


「と、ところでミスティさんは、一時的にでも神天界に帰れるの?」


 そのシンプルかつ当然の疑問に、俺を含めその場に居たアークとリメルもミスティに視線を集めていた。


「帰れないと思います……。人界と神天界じゃあ存在している次元が違うので、高位の力で次元の扉を創造しないと帰ることはできないです。もちろん私にはそんな力は無いので無理だと思います……。3千年前の神人戦争の時は、強力な力を持ってた人達が多かったみたいなので、次元の扉を人界から開くことが出来たらしいですけど……」


 少し困りながら返事を返すミスティに、ルールウが何かを直感で感じ取ったのか、さらに質問をした。


「──じゃ、じゃあどこに住む……の?」

 

 何か思うところがあるのか、ルールウは俺を見て汗を流しながらミスティだけじゃなく俺にも質問の答えを求めた。


 だが、それに答えたのはリメルだった。


「じゃあ、ハルアの家に住めばいいんじゃないの? 喚んだ責任もあるし、ハルアひとり暮らしなんだからさ」


 その言葉に即座に反応したのは質問した本人、ルールウだ。


「ちょっと待って! 何でそうなるの!? 確かに責任はあるとは思うけど一緒に暮らすまではしなくていいんじゃないの? それに、ミスティさんは女の子だし! 同じ女子と一緒の方がいいと思うし! わ、私の家も部屋はあるし! アークもハルアもそう思うよねっ??」


 大粒の汗を流しながら、ルールウはそれを全力で阻止しようとしていた。


 やっぱり何か思う所があるらしい……。

 

 アークと俺にも同意を求めたが、アークは「確かに責任はあるし、纏召喚だから近くにいた方がいいと思うし」と答え、俺はあからさまに動揺していた。



 ミスティはもじもじしながら「えっと……そのっ……」と呟いていた。


 リメルは面白そうに──決まりだね!! と言い、話はなるようにしかならないもので、そのまま俺の家に住むことが決まった。


「……ハルア。変なことしたら、ぶんなぐ、怒るからね!」


「す、するわけねーだろ! 俺をどんなイメージで見てんだよ!?」


「まぁ何が起こるか分からないよー?」


 リメルは口元を緩ませ、目が笑いつつ、俺とミスティ、そしてルールウを見ながら言っていた。──こいつ、完全に面白がってやがるな。と思ったが口には出さないでいた。

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