第8話 実践測定①

 開始と同時に、ひとまず俺達は、目標を岩か木に的を絞ることにした。


 身体強化でどこまで破壊出来るか分からないので、これくらいならっということだ。


 2倍の強化では、鉄は恐らく破壊するのに時間が掛かりそうだろう。逆に土は点数が低い。


 そうなると、壊せそうで、点数も中間の2つということになる。

 

「ミスティ! 身体強化を頼む! やってみねーと分からないけど、天衣力を重ねる様にイメージしてみるから!」

 

 と走りながら頼んだ。


「分かったよ。 使けど!」


 ──が、この言葉を聞いて少し森に入ったところで足止めた。


 俺が急に足を止めたので、ミスティが少し俺の前を行き過ぎた。

 

「どうしたの? なんで急に止まったの?」


「あの……ミスティ……さん? ってどういうこと……?」


 その言葉にミスティは首を傾げ──だって使ったことないもん……。


 ──ん? と不思議そうに声を出した。


「なんで使ったことがないのに2倍くらいって分かるの?」 


「だって、私の神力の幅を考えたらそのくらいかなって……」


「じゃあ、それ以下の可能性もあるの?」

「う〜ん……。かも!」


「…………」


 俺は不安を抱えながらも、身体強化をお願いした。

 

 結果、1・2倍の強化にとどまった。

 

「俺の天衣力を重ねても、1・5倍くらいだな……」 

「……ごめんなさい……」


 と、自分の能力が予想のさらに下だった事に、ショックを受けたミスティだったけど、俺も天衣力の低さに同じくショックを受けていた──まさか2人合わせても1・5倍くらいだったとは……。


 本当にどうしよう……

 

 とりあえず、俺達は目標の岩と木を目指そうと確認し、森の中を走り出していた。だが、なかなか見つからない。


 他の皆んなは恐らく、〈無召力〉と〈天衣力〉の力を応用した、探索能力を使い、似た波長を探してるのではないかと思う。


 だが、俺は自分の能力を上げる為に、天衣力をフル活用してるからそんな余裕はない──まぁ、フル活用といっても微々たるものなのだが……。


 ミスティはというと、走るのに必死で、それどころではない様だった。

 ひとまず足を止めて休息を取る事にした。

 あまり走ってないけど……。


「なぁ、ミスティ……。大丈夫か? 運動とかはしてるのか?」


「……はぁはぁはぁ──。し、してないよ全然。でも、大丈夫……がんばる」


 信じられないほど汗をかきなが、必死の形相で答えてくれた。


 だけど、こんな時に何だが、運動もしていないのに割といいスタイルをしていると思う。

 決して邪な目で見ているわけではないぞ! それを伝えると、少し頬を赤らめ──ス、ストレッチはしてるよ。と言ってきた。


「まぁ、それはさておき、まだ一体も破壊できてないな……。ミスティは身体強化の他には何か使える魔法はある?」


 そう聞くと、少し考えて──あ……。と何かを思い出した様な声を出した。


 ──なんか嫌な予感がする……。


「……微弱だけど、探索魔法が……使える」


 と、すでに申し訳なさそうな表情で伝えてきた。

 

(──やっぱりかぁぁぁ……)

 

 心の中でそんな叫び声を上げながら、ミスティに目をやると、さっき以上に汗を流し、目を泳がせ、両手をもじもじと合わせて俯き加減に答えた。


 ──まぁ聞かなかった俺が悪いな……。

 そうでなくても強制的に喚んだ訳だし……。と思いながら、口を開いた。


「ごめん。俺が聞かなかったから、無駄な探索をさせて、疲れさせたよな……」


「ううん……。私も破壊できる補助の魔法しか考えてなかったから、忘れててごめんなさい」


 頭を左右に振りながら、自分の方こそ申し訳なかったと返してくれた。

 

「それでなんだけど、その微弱っていう探索魔法で人形ゴーレムを探せたりするか?」


「多分、大丈夫だと思う……。人形ゴーレムも魔力が宿ってるはずだから、その気配を探ればいいとは思うけど、その物質が何かまでは分からないと思うよ。恐らくだけど、込められてる魔力量は均一だから、実際に行ってみないと分からないと思うよ」


「それで十分だよ。この状況をなんとか打開出来ればいいんだよ。今のままじゃあ、時間ばかり掛かってどうにもならないしな」


 そう言い、早速ミスティに探索魔法を使ってもらった。


 周囲100メルトに大体、5、6体あるという映像が、頭の中に薄っすらと浮かび、場所も確認できた。


 ただ、やっぱりその物体が何かまでは判断できなかった。入ってきた映像は、魔力の白っぽい光が点々としているだけのものだったからだ。

 

 でも、今までの何処にあるか分からない状態よりも、遥かにましだ。


 早速、一番近くにある場所へと向かうと、そこには、木で創られた高さ10センチ程の人形ゴーレムが木の樹洞ウロの中にひっそりと置かれていた。

 

「分かるか! こんなもん!」


 と言いながら一体目を壊した。


「確かに見つけ難くしてあるとは言ってたけど……全部こんな感じなのかなぁ……? 他の人達よくこんなの見つけたよね」


「まぁ、力の応用だろうけど……にしても……。文句を言っても仕方ないし、次を探そうか……」


 すぐさま、次の場所へと向かったのだが、そこにはアーチ状になった巨大な岩があるだけで、めぼしい物は見つけられなかった。

 が、しかし、よく見てみると、上部にいくにつれて腕のような物と、さらに、上には頭の様な物が付いていた──これが人形ゴーレムの様だな……。


「さっきとは違って、えらく大きいな……。こんなに大小が違うのかよ……」


「──そだね……。この人形ゴーレムは、周りの木と高さが同じくらいだから、10メルトくらいはあるよ……」


「──これを壊すのは無理だろうな……。時間かければ何とかなるかも知れないけどな」


「う〜ん……時間かけても無理だと思うよ……」


 2人の間に数秒の間があり、お互い目を合わせると、口を揃えて言った。

 

「──次に行こうか……」


「──次に行こうよ……」


 互いにそう言うと、次の目標に向けて進むことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る