第7話 能力覚醒③
あれから、服を借りるために、メルサラーク教官の所へと向かった。
身長も体型も胸の大きさも違い、断念した。
その際、ミスティはショックを受けていたが、そもそも身長が違うので、落ち込むことはなかった。
カシャルーティス教官は俺と同じくらいだから論外。
結果、ラビットート教官の所へ行くこととなった。
ミスティの身長が152センチらしく、1番近い体型のラビットート教官ということになった。
始めからラビットート教官の所へと行けばよかったんだが、熊のイメージが強く、思い浮かばなかった。
借りた服はというと、上は袖口に向かって広がる白の長袖シャツに、下は、恐らくラビットート教官が好きなんだろうと思うホットパンツで、色は赤ではなく黒だった。
だが、借りたはいいが胸部に余裕を感じる。
その結果、ミスティはラビットート教官と自分を見比べながら、落ち込んだ……。
俺はひとまず服の話題に持っていこうと口を開いた。
「借りれたから良かったよ……。合う服があって助かったよなぁ……」
「そうですね……胸は違うけど……」
と、ボソリと言ったのが聞こえた──何を言えばいいのか分からない!!
そう思っていると、ゼシアス教官から早く測定場所に来いと連絡があって、その場は何とかしのぎ、急いで向かった。
ラビットート教官の部屋から出て、煉瓦道などを通り、10分ほど行った所に教官と召喚クラスの学生が集まっていた。
その場所は、周囲を高い木々にグルっと囲まれ、ちょっとした森林の様になり、大きな広場には、大小様々な岩が点在する円形の場所だった。
俺達がそこに着くと、ゼシアス教官が「よし! 全員揃ったな!」と言い、測定方法の説明が始まった。
「これから、測定のやり方を説明するぞ! この場所は様々な実技訓練をする場所で、半径が約500メルトで、このスイール支部の中では、3番目くらいの広さだ。この中に、鉄・岩・木・土で出来た
言われるままに、学生達がスタート地点に立つと、教官から開始の合図が言い渡された。
「自分の力を信じろ! 自分の能力と向かい合え! 自分なら必ず出来ると言い聞かせろ! さぁ! これからが始まりだーー!!」
その気合の入った掛け声と同時に、学生達は即座に行動を開始したのだった。
ゼシアス教官の合図で開始された測定は、3人が終えるまで約30分。
俺のところまではかなり時間はある。
その間に、ミスティと能力のことについて話すことにした。
「俺は身体は鍛えてるけど、魔法は使えないんだ。一応、
「そう……なんだよね……私を纏うことが出来ないから、ダメなんだよね……。私は
「強力じゃなくても、少しでも補助してもらえるのがあれば、お願いしたいんだけど……」
「
「じゃあ、まぁそれでお願いするよ」
「分かったよ。やってみるね」
そう話をしていると、心配そうにアークがやって来た。多分、俺達がどうするのかが気になったんだと思う。
「ハルア、お前どうするんだ? 纏えないんじゃこの測定難しいんじゃないのか?」
「……う〜ん……。確かに難しいとは思うけど、ミスティが身体強化魔法が使えるみたいだから、俺の天衣力と上手く合わせられればなって……」
俺はミスティの方を見ながら、さっきまで話していた内容を口にした。
それに気づき、アークはミスティの方を向き、申し訳なさそうに──すまない。と前置きをし、遅ればせながら自己紹介と俺の幼馴染だという事を説明した。
それに応じて、ミスティも自己紹介を済ませると、アークはそのまま言葉を続けた。
「ミスティさん、コイツは人一倍に魔者達から人を守りたいって思ってる奴だからさ、厳しい状況だとは思うけど、少しでも手伝ってやってくれ」
「はい。私もそのつもりですよ。どこまで出来るか分かりませんけど……。こうなった以上どうにかしないといけないので」
そんな話に夢中になっていると、制限時間の30分程で一組目が帰って来た。
教官はスクリーンに表示された結果を見る様に学生に言い、個々にアドバイスを送っていた。
それを見ると1番の女子学生は150点と表示され、あのデカイ黒猫との相性は〈A〉となっていた。2番目の砂鉄を纏う
本当に全て表示されている事に、俺もそうだが、ミスティも緊張してきたみたいだった。
俺達まで、まだ時間はあるが、その時間がまた心拍数を上げる良い材料となっていた。
──とりあえず、深呼吸をしながら落ち着こう! とミスティに話しかけたが、俺以上に緊張があるみたいで、「大丈夫……大丈夫……」と呟いていた。
(……本当に大丈夫かな……)
◇🔹◇🔹◇
「よし! 次で最後だな! 19番アーク・リザーブ、20番ハルア・イシュリア出て来い!」
そう呼ばれ、俺とアークはスタート地点まで出てきた。周りには測定を終えた学生達が、教官を驚かせた能力を持つアークに視線を集中させていた。
それとは真逆に、俺の方には誰ひとりとして視線どころか、体すら向けていなかった。
たまに、チラッと見る者がいたが、その視線の先にはミスティがいて、俺には微塵も向けられていない。
(まぁ、そうだろうな……。俺は纏えないからな……。でも、なんとか目標値まではいきたいな。身体強化でどこまでいけるか……)
そんなことを考えていると、隣のミスティが、俺の左袖をくいくいっと引っ張り、もじもじしながら話しかけてきた。
「あのね……、さっきからすごく見られてる様な気がするんだけど……」
──そりゃあそうさ……。さっきまで半裸だったんだからさ。
と口に出してしまった。
ミスティの顔は見る見るうちに赤くなり、自分の体を抱く様にして俺に返して来た。
「誰のせいですか……。身体強化魔法かけませんよ……」
「……ごめん。もう言いません」
それを言い終わるくらいに、教官から開始の合図が掛かり、行動を開始した。
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