第48話 ペリシア・ラビットート

「──あの……ペリシアさん。レオリスとラシリアはそんなに有名なのですか?」


 その問いに答えてくれた。

「じゃあ遠征の話を聞く前に、お二人のことを少し話そうか」

 そして、俺が本人達に聞けなかった話をしてくれる事になった────。


 ◇🔹◇🔹◇


「まずはレオリス様のことから話そうか」

 ペリシアさんはそう言うと口を開いてくれた。


「レオリス様は人でありながら神天界でその大半を過ごした人だよ。ラフィサリウス様が最上神になり、再び人間と接するようにはなったが、未だに反人間派の神々と天使は多い。そういった中で、彼だけはなぜか暮らせていたんだよ──」


 そう言いレオリスから聞いた話を教えてくれた。


 レオリスは幼い頃住んでいた場所が魔者に破壊された際、たった一人だけ生き残っていた。

 運良く、隠れていた場所が見つからず助かった。

 一人きりになり幼いレオリスはどうするともできずただ泣いていたそうだ。

 

 そこに、一人の女性が現れた。

 それが神ラフィサリウスの妹であり、身寄りがなくなったレオリスを神天界に連れ帰ったらしい。


 そこで、魔者に対抗するための力をつけるために研鑽を積んだ。そして再び地上に戻り、魔者達を次々と倒していき、いつの間にか最強と言われるようになったみたいだ。


 だが、修行をしている途中から気になることがあった。自分を連れてきてくれたラフィサリウスの妹、ミシュレニアの姿が神天界で見かけなくなった。


 神天界にいる時から地上と神天界を行ったり来たりしていたらしいが、ある日を境に全く姿を見せなくなったという。

 その当時、色んな憶測が神天界に広がっていた。 


 自分を連れてきたせいで反人間派の者達に消されただの、地上で魔物に襲われ殺されただの色々と……。


 ただこれは憶測の域を出ていない。


 だけど、レオリスが最後に見かけた時、彼女は少しふっくらとしていたらしい。

 これも憶測でしかないが、彼女は人間の子供を孕っていたのではないかと言っていた。

 そして、地上で旅をしながら、恩人の行方を探している。


 ──このような話をレオリスから聞かされた。とペリシアさんは言った。


 神天界と神の名前に驚きつつも、レオリスの素性がわかった。まさか、神天界で暮らしていたとは驚きでしかない。だが、あの強さを考えれば納得する。


 そして次にラシリアについて話してくれた。

「どこから話せばいいものか……」

 と考えながら腕を組んでいた。


 ──しばしの思考を巡らせると、魔者の言っていたフルネームから始まった。


「ラシリア様の名前は、ラシリア・リンスレット・エルダールと言い、三千年前の半神人ハゴットの国ミレナザーダ王国の第一王女だよ」


「──!? 三千年前!? 一体何がどうなっているんですか!? いくら半神人ハゴットだと言ってもそこまで長生きはできないはずです!」


 アークやミスティ達も驚いてはいるが、この俺の驚きにペリシアさんは「──驚くのも当然だが……」と言い続けた。


「──ラシリア様は《稀代の天才》と言われ、自らが使うその創世魔法で、魂と肉体を武器に変える方法を創り出したんだよ。それに彼女は半神人ハゴットの中でも圧倒的な強さを誇っている。神に匹敵する存在なんだよ」


 ペリシアさんの説明にさらに驚いた。

 現在、この世界でそんなとんでもない魔法を使える者など聞いたことがない。

 しかも神に匹敵するなんて……。


 強さも規格外だったが、その魔法の才能も規格外だった……。

 これで漸く納得ができた。ラシリアが剣になったことも、そのとんでもない強さだったことも。


 俺は改めて思った。

 俺はとんでもない人達と行動をしていたんだな──と……。


 それに────


(ひょっとして、俺がラシリアからもらった剣って、とんでもないな物なんじゃないのかよ……。古代武器エンシェントウエポンとか言ってたし。まぁ使えばわかる、か……?)



「──とそんな感じかな。じゃあ今度は君達の遠征の話も聞きたいが……」


 そう言い淀みひとつ咳払いをすると──


「──君も帰ったばかりで疲労しているだろう……遠征の詳しい話は明日聞くとしよう……」


 そう言いながらセンスに「──これでいいんだろう?」と腰に手を当て言っていた。

 それを言われた当人であるセンスは頬を膨らませながら頷いていた。

 

 どうやら帰ってきたばかりの俺のことを心配して姉に不愉快な表情を向けていたらしいことが分かった。

 

「と言うことだからな! ハルア! また明日来てくれ! 今度は機関長の姉貴の部屋で話そーな!」

 センスは俺に笑顔を向けてそう言うとアーク達にも帰るように促していた。


「──明日の君の都合のいい時間に合わせよう。前もって言ってくれれば準備をしておくよ」

 ペリシアさんも笑顔で言ってくれた。


 とりあえず、遠征の話は明日と言うことになり俺達は帰路に着いた。

 



 

 

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