第49話 スイール襲撃

「──明日の君の都合のいい時間に合わせよう。前もって言ってくれれば準備をしておくよ」

 ペリシアさんも笑顔で言ってくれた。


 とりあえず、遠征の話は明日と言うことになり俺達は帰路に着いた。



  ◇🔹◇🔹◇



 家に着いた俺は、ミスティの作った夕飯を食べながら、これまでの経緯を話した。

 

 ラシリアに施術をしてもらい天衣力がまともに使えるようになったことと、俺の中になぜか《神力》が混在していたことを。

 そして、数分間 《絶する力》を行使できるようになる、ラシリアが創った古代武器エンシェントウエポンと表現した剣の柄だけの武器を貰ったことも。


 ミスティはフォークを置き、お茶を飲むと俺をジッと見ながら口を開いた。


「最初がどんな風に〈天衣力と神力〉が混在していたかは分からないけど、それでも分かるよ。今ハルアから感じる力はハルアの友達のと変わらないと思う。会った時よりも雰囲気が違うのだけは分かるよ。こんなことが出来るなんて凄いよ……。それと、ラシリアさんから貰った剣? を見せてくれないかな?」


 そう言われ、俺はラシリアから貰った剣の柄を手渡した。それをミスティは色んなところを隈なく見ると言った。


「私は《神天界》で、師匠が持っている物で同じような物を見たことがあるんだよ。それでね、師匠が『この武器はとんでもない力を持っているのだよ。その昔、とある姫が創り上げラフィに……ラフィサリウスに渡した物を私が預かった。一度使ったらしいが、引くくらいえげつなかったそうだ』て言ってたよ」


 これを聞いた俺は、──あのラシリアなら創りかねない。と思った。あの変な魔生をいとも容易くあしらう姿……。──うん。あいつならやるな! そう思いつつ俺も少し不安になった。この武器大丈夫か……?


「まあ、使う時は気をつけるよ……」

  

「──はははっ……」と乾いた声で笑っているミスティ。続けて口を開いた。


「まぁラシリアさんを信じよーね……」


 ここまで話すと、さっきミスティが口にした師匠のことが少し気になった。さっきの会話を聞く限り、ミスティの師匠というのはラフィサリウスと親しい仲にあることが窺える。

 これをミスティに聞いてみた。


「ミスティの師匠って最高神のラフィサリウスとはどんな関係にあるんだ?」


「う〜ん……。そうだね、師匠はラフィサリウス様の師匠でもあるみたいなんだよ。だから、ラフィサリウス様も頭が上がらないらしいですよ……」


「最高神なのに……? なんかとんでもない師匠だな……」

 俺が言うと、ミスティは遠い目をしながら返してきた。

「私の師匠滅茶苦茶なんです……。戦場を駆け抜け魔者達を蹂躙しまくったって……なんか『戦乙女ヴァルキュリヤ』とも呼ばれてたみたいです……」

「本当にとんでもねーな……(ということはその弟子であるミスティもそうなるのか……?)」


 などと思いながら、明日のことの話をした。


「とりあえず明日は午前中にペリシアさんに連絡を入れて、午後から部屋に行こうと思うけど大丈夫か?」


 頷いたミスティは「──うん。それでいいよ」と返し、俺の疲れを気にしてくれた。


「今日は早く休んだほうがいいよ。後片付けとかは私がやっておくから早く休んでね!」

 そう言われて、俺は素直に従った。

 自分の部屋に戻りベッドに横になると、思っていた以上に疲れていたらしくすぐに眠りに落ちた。


 そして夢の中──懐かしく感じる声が聞こる……


『──にい様、私はこの子を人界で育てます。妹である私が人の子を産み育てるのは兄様の立場を悪くします……。ですので私は地上に降り、人として過ごします。その際、人々に力を覚醒させるためのリングを構築します。これできっと兄様が降らせた【覚醒魔力アクシカル種子シード】のお役に立てると思います……』




 この声は知っている……と思う……。

 俺の母……さん……?




 ──ル……ア。ハ、ルア! ねぇ! ハルア! 起きて!! 起きてハルア!!! ───」


 

 夢から目覚めさせられた俺は、言葉を発したであろ彼女……ミスティに聞いていた。


「──どうしたんだよ急に……。何かあったのか?」


「──大変だよ! 街が、スイールの街が……!」

 このミスティの普通ではない言葉に窓から外に目を向けた。


 すると、スイールの街の中心の方角から魔生の叫び声が響き、真っ赤な炎が立ち上っていた。

 


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