第39話 「と言う事になったから」
「あと5分くらいかしら?」
「そんなもんだろう……」
「……何がだよ……?」
3人の会話が示すのは、現在こちらに向かってきている魔者であった。猛スピードで向かって来るそれはレオリスとラシリアに完全に認識されていた。
「……うムぐッ。これ美味しいわね。中々な味付けよね」
「……んぐん。確かに、美味いな」
2人は頬をいっぱいにしながらハルアの作った料理を食べていた……結界が施されたテントの中で。
ハルアの施術が終わった後で、向かってくる気配を感じながらも、『お腹空いた』というラシリアの言葉に従い、食事を取っていたのだ。
「だから何のことだよ! 5分て何言ってんだよ!」
「だからぁ、
「そういう事だ……」
寝そべり、爪楊枝を咥えながらレオリスはリラックスして答えていた。
ハルアは呆気に取られながら──何でだよ! とツッコミを入れたくなっていた。というか、入れていた。
「何でだよ! 何でそんなにリラックスなんだよ! 俺が襲われたあの猛級を連れて来たんだから、それより強いのは間違いないんだろ!?」
ハルアは捲し立てるように言ったが──。
「そうねぇ〜。
「俺は寝るからよぉ〜。あとはよろしく〜」
その言葉を逃さず、ラシリアはレオリスの胸ぐらを掴んで、ものすごい勢いで揺らしていた。
「レオ! ちょっと待ちなさいよ!! あなた! 私がハルアの施術してる間に寝てたじゃない! まだ寝るつもりなの!? ずるいわ!」
「いいだろぉ……。別にぃぃ。俺は生身だぞ……。飯食ったんだ、眠くもなるさ」
「なぁに言ってのよぉ!! 今の私も生身よ変わらないでしょ!」
「ああ、悪かったよぉ。そうだな。今は生身だよなぁ。でも、魔者向かってきてるぞ」
「だからあなたがやりなさいよ!」
「眠いんだよなぁ……おっ! そうだ! ハルアに相手してもらえばいいんじゃないか? ちょうど施術も終わってることだしな」
「いやいや……。死ぬわよハルア……」
レオリスはラシリアの耳元でハルアに聞き取れない程度のボリュームで何かを言っている。
「……でもそれって結局私ってことよね?」
「いいじゃねーか。お前も施術を終えたハルアがどの程度動けるか確認できんだからな!」
「──はぁ。分かったわよ……。レッスンってことよね……」
ラシリアはそう言い、ハルアに近づくと──
「……という事になったから、ハルア。私を使いなさい」
「……はぁ? ラシリアを使うってどういう意味だよ……?」
「まぁ、魔者が来たら分かるわよ。そろそろかしら」
それを言い終わる頃に、魔者──ルジール・ジャウロはテントの表に到着していた。
その気配を確認したラシリアは、ハルアを連れて表に出ていた。
ルジールは2人を見下ろす形で木の上に立ち、そこから窺える表情は怒りに溢れていた。
「お前か……。力の正体は……」
ルジールは殺気を放ち、目つきを鋭くしながらラシリアに向けて言った。
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