第32話 絶する力
「何すんだ! フィア姉! アミザ姉! オレはアイツを許さない!」
「気持ちは分かるよ! センスちゃん! でも、今はハルア君の生存を信じて早く助けに向かわないと!」
「そうだよ!! ここはうちらがどうにかするから早くハルア君を追いかけな!」
センスは下唇を噛み締めると、「──……分かった。オレ急いで向かうよ」と話がつきそうになった時、男はさらに言葉を続けた。
「俺をどうにかすると言ったのか? お前らも大概だなァ! 自分達と俺の力の差もわからないのか?」
「力の差? それってあんたが魔者で力を持ってるって言いたいの? あんたがミスティちゃんを女神って言ってたから魔者なのは気付いてたよ。普通の人間には人か神だなんて区別できないからね」
フィアが言うと男は呆れ気味に言ってきた。
「ふハハハハッ! そんなことじゃねーよ……。お前らと俺は一度会ってんだよ。受付のお姉さん?」
そう言い放った男は、数秒後には目深にフードを被った少年の姿になっていた。
フィアとアミザはその姿には見覚えがあった。忘れる筈がない……。
恐らく自分達に魔法を掛けた張本人だろうという者を──。
「──!? あんたあの時の!?」
「……まさか。今もうちらに掛けてる……?」
「ご名答。分かっててもそう見えるだろ? これがお前らと俺の力の差だ。自分よりも圧倒的に上の者の力には呑まれるんだよ。だから、お前らじゃ俺には勝てないぞ?」
フィアとアミザは歯を食いしばり魔者の言う事に反論できなかった。2人は知っているからだ……。
魔法を使う者の当たり前の常識……──自分より圧倒的に上の者の魔法には呑まれてしまうという事を……。
それを見ていたセンスは──
「やっぱりオレしかいないって事だな……。オレにはアイツの姿はちゃんと魔者に見えてるからな……ハルアの所へはフィア姉とアミザ姉が向かってくれ。オレはさっさとコイツを始末するから!」
「お前は確かにこの中では実力は一番みたいだが、それが、俺は勝てる理由にはならんぞ」
「やってみねぇと分からねーぞ! オレは怒ってるんだよ……」
「そうか……。じゃあやってみ──!?」
魔者が言おうとした時、何かに気付いたのか、センスの方ではなく、離れた森の中へ視線を向けていた。
(何が起こった!? 俺が用意した
その魔者を見たセンスも、何かを感じていた。
「……何だよ。この馬鹿げた力は……?」
この声にフィアとアミザ、そしてアーク、ミスティも気付いた。ミスティに至っては──。
(……この感じは神力……なの?)
この間に、魔者はセンス達から離れると「──もうお前達の相手をしている場合ではなくなった。命拾いをしたな……」と言うと、力を感じた方角へと走り去っていった。
「姉ちゃん達! 後は任せた!! オレもアイツを追う!! アイツをぶっ倒し、ハルアを連れ帰る!!」
そう言うと、センスも後を追う様に走り出した。
それを見送るとアークは不安を口にしていた。
「フィアさん……アミザさん。ハルアは大丈夫だろうか?」
その言葉に、ミスティ達も不安な顔をしていたが、フィアはひと言──。
「……センスちゃんを信じよう」
と言うと、アーク達を連れて森を後にした。
──そしてちょうどこの時に、ラシリアとレオリスによりハルアは安全な場所へと移動させられていたのだった。
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