第41話 美しい剣《ラシエル》

 それはアクアブルーで両刃の美しい長剣ロングソードだった。

 その長さは、ラシリアと変わらないほどの全長160センチ程であった。


 それはハルアの手に収まり、反射的に迫ってくる人造魔生アーシャルを薙いでいた。


 その切先は襲い掛かろうと伸ばしたゴリラ魔生の右腕を軽々切り落としていた。腕を切り落とされた魔生はその激痛に動きに止め、ルジールは目の前で起きた事に、絶句した。


(何が起こった!? 女が剣に変わり、あの雑魚がそれを使い俺の人造魔生アーシャルに傷をつけただと……! 何だあの剣は……!?)


 ハルア自身も自らがやった事に思考が追いついていなかった。


「……なんだ? 切先が掠っただけだった……よな。それに、この剣は見た目よりも遥かに軽い……」


 そう口に出すと、それを聞いていた【剣】──ラシリアはハルアの頭に直接話しかけてきた。



〈当たり前でしょ! 元が軽いんだから!〉


「──!? え!? 頭に直接……。ラシリアか?」



〈それ以外誰がいるのよ。あなたが今手に持っているのは私なのよ! それと、この状態だったらハルアも頭の中で会話できるからね〉


〈そうなのか……?〉


〈そうなの!〉


〈マジだな……。でも、人が剣に変わるってどう言うことだよ? どういう仕組みなんだよ?〉


〈まぁ話してあげたいけど、今じゃないわね……。後から説明してあげるから、さっさとアイツぶっ倒すわよ! ほら! 来るわよ!〉


 そう促され、魔生に目を向けると切り落とされた腕を、黒い靄で腕の代わりをし、こちらに向かって来ていた。


「腕は落とされたが、カバーはできる! 剣の力でしか戦えない奴にはこの魔生は倒せんからなァ!!!」


 そう叫ぶと、再度魔生に指示を出し、魔者は見物するように後ろに下がった。それを指示された魔生は今度はすぐに攻撃には移らなかった。


 相手を窺うように一定の距離を取りゆっくりと移動している。


 ハルアと剣になったラシリア──【ラシエル】も間合いを考えながら魔生の動きを見ていた。


〈ハルア、よく聞きなさいよ、ちょうどいいからあなたに戦い方を教えてあげるわ。弱い相手を練習台にしても仕方ないからね。あなたにとって、このは練習台にちょうどいいのよねぇ〉


〈お猿さんって……〉


〈いいハルア、あの魔生は一度腕を斬られてるわ。だから、最初と違いすぐには仕掛けようとしない。間合いを取ってあなたのでかたを窺ってるわ……〉


〈ああ、そうみたいだな……。そのくらいは分かる〉


〈だったらあれが次にどう行動するか分かる?〉


 そう尋ねられ、ハルアは疑問符を浮かべると、それを察したようにラシリアが話しかけてきた。


〈どう攻撃してくるかってことよ!〉


〈そんなの分かるわけないだろ? 相手に対応して考えるんだからさ……〉


〈それが違うのよ。相手に対応するんじゃなくて、のよ。相手の動きをよく観察してどう動くか先に読み取るのよ!〉


 そう告げるとラシリアの実践レッスンが始まった。

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