第42話 ラシリアのレッスン

 〈そんなことできる訳ないだろ!? 天衣力もまともに使えないんだぞ!?〉


〈今なら可能だと思うわよ。神力と天衣力を表裏に分けたからね……。だから、今身体強化を使えば以前より遥かに上昇すると思うわ〉


 ラシリアにそう言われたが、ハルアはあまり実感をもっていなかった。


 でも、そう言われて確かめないなんて選択肢はない! と考えたのだろう、ハルアは実行した。

 結果的に、以前とは違い2・5倍ほどまで上昇していた。


〈なんかスゲーよ……ここまで上がるとは思わなかったよ……〉


〈でしょ? それに2・5倍くらいになったってことは、相手の速さが変わらない限り、その行動は2分の1程度には認識できるはずよ〉


 魔生はその状況になっているとは知らず、右足に力を込めて踏み切ろうとしていた。


〈……魔生アイツ右足で踏み切ろうとしてる……〉


〈じゃあどうする?〉



 聞き返された瞬間! ハルアは咄嗟に右に飛び退いた。

 しかし、靄の腕が伸び、腹部へ強烈な一撃をくらっていた。その衝撃で横に吹き飛ばされ、背中から大樹にぶち当たり全身を激痛が襲っている。


〈──ハルア。動きを読んだのは良かったけど、その後ね。アイツは右腕を切り落とされてるから、残りの左腕を切り落とされないように、黒の腕を伸ばす確率が高いことは読まないといけないわ。それに今なら、筋肉の僅かな動きが分かるはずよ。その動きを先読みして行動を考えなさい……〉


 そう告げられ、改めて魔生に目をやると、まとも右足で踏み切ろうとしていた。


 ──だが、次は違っていた。


 左の腕と右の黒の腕を大きく広げようとしている僅かな筋肉の動きを読み取れたのだ。

 それはハルア目掛けての攻撃の予兆だった。



(……両手を広げ俺を叩き潰すつもり……か?)

 そう考え、飛び掛かろうとしていた魔生の下を潜り抜け、反対側へと移動した。



〈……これが先を読むってこと……なんだな〉


〈そうよ、だからそれを鍛えなさい! そうすれば纏召喚テンサモンが使えなくても今よりも大分戦い易くなるはずよ!〉



 次の魔生の行動は、──即座に反転し両足で踏み切り、両手を大きく振りかぶるとハルアを地面に叩きつけるように振り下ろしていた。


 それを感じ取ったハルアは、後方に飛び退き躱すと、──ラシエルーーーー!!!! と叫んでいた。



〈……もう……何、興奮して──……!? え? なんなのこれ!?〉



 ラシリアがそれを感じた時にはすでに、ハルアの力に呑み込まれていた。



(どう言うことなの!? 意味がわからない……。これって私よりハルアの方が……。でも、これは一過性って感じね……。だけど、これがハルアの潜在能力なら……ふふっ……面白そうじゃない!)



 ラシエルはハルアの力に影響を受けると、その刀身を透き通るあかに変化させた。

 

 ハルアにも右手首の内側に5枚の花びらを模した紅の刻印が浮かび上がっていた。

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