第51話 ハルアの怒り
「ミスティ、急ごう。多分スイールの中心地はこんなもんじゃないと思うからさ……。
ミスティは目の前のことに驚きながら頷くと「──うん。急ごう」といい、急ぐ俺の後方を追うように中心部へと足を進めていた。
◇🔹◇🔹◇
──スイール中心部──
立ち並ぶ建物は半壊、全壊──。
至るとこから炎があがり、全焼により黒炭になっている物、未だ燃え続けている建物など、大凡人が住める物ではなくなっていた。
人々は悲鳴を響き渡らせ逃げ惑っている。
さながら地獄絵図といえる。
街中には黒い靄を纏う
長い刃をその鼻に持つ5メルト程ある
スイールに出現した
これに応戦するように、ルーメルの教官、【
新入生であるアーク、リメル、ルールウ達は後方支援を主としながら、住民の保護、避難を任されていた。
これは、新入生達にこの
なにせ、
アーク達新人もこれをよく理解しており、自分達ができることに尽力を注いでいた。
しかし、この多数の
それは必然的に新人も相対してしまうという可能性を高めてしまう────
「リメル! そっちの人達を頼む! ルールウは残されている人達がいないか確認してくれ!」
アークのこの言葉にリメルとルールウは応える。
「分かってるわ! ルールウ! そっちは1人で大丈夫?」
「……うん! 今のところ魔生は現れてないから大丈夫だよ!」
これを確認するとアークは人々の誘導を続けていた。ルールウも周囲に残された人がいないことが分かると、アークとリメルに合流するために駆け寄ろうとしたその時──!
──ズダンッ!
大きな音と共に黒い巨体がルールウの目の前に降りてきた。姿は黒猿だが、体長は今までの黒猿のその比ではなかった。
それは黒象を超える大きさで、10メルト近くあるように思える。アークとリメルはこれに即座に反応し、戦闘態勢に入った!
────だが……!
それはすでに遅く、ルールウは巨体を持つ黒猿に体を鷲掴みにされていたのだ。
逃れようとしもがくルールウの、動きを封じるように握る強さを強めると、長い舌を伸ばし味見をするようにその顔を舐めていた。
アークは人々にこの場からすぐに離れるように言うと、自らの能力である【光霊剣】を出現させるとルールウを掴む手を目掛け最大の力を込めて降り下ろした。
しかし、擦り傷程度しか与えられず、びくともしない。リメルも続けて、
だが、これもほとんどダメージを与えることはなく弾かれた。2人の焦りは増していくが、ルールウを締め付けは手はどんどんと閉じていくばかりであった。
次には、黒猿の握る手の中から鈍い音が聞こえ始めていた。
「──あ……あ゛あ゛あ゛ぁぁぁガぁ゛ぁ゛ぁ゛」
ルールウの言葉にならない鈍い声が聞こえてくる。
アークもリメルも止むことなく攻撃を続けるがその一切が効いていない。
それどころか、もう片方の腕で弾き飛ばされ、ダメージを与えることすら難しくなる状態へと追い込まれていた。
段々と声が小さくなるルールウを絶望の表情で見ることしかできないでいた。
「ルールウ! ルールウぅぅぅ──!!!!」
リメルが悲痛な声で叫ぶ。
「──くそ! なんで何もできない! ルールウ! ルールウ……!」
アークの無力な自分への罵倒と、ルールウを助けられない絶望の声が聞こえている。
もうすでに、ルールウの意識はない。
あとは潰されるだけの友人を眺めるしかなかった。
──だが!
「──このくそ猿ぅぅぅぅ!! ルールウになにしやがんだぁぁぁぁーー!」
この声と同時に巨大な黒猿のその大きな腕は斬り落とされ、その手からルールウを抱き抱えたハルアがアークとリメルの前へと舞い降りていた。
これに続いてミスティも到着している──
「──ハルアなのか!?」
「あれを斬ったの!?」
アークとリメルは驚いている。
2人に視線を送り頷くと、ミスティに言った。
「──ミスティ! ルールウの回復を頼む!」
「任せて! 絶対大丈夫だから!」
「任せた!」
ひとこと言うと、片腕をなくした巨大な黒猿に向け言った。
「──このくそ猿!
そう言うと、すでに展開しているラシリアからもらった
「──簡単に死ねると思うなよ……!」
ハルアの絶する力は、目の前の黒猿を駆逐するべくその力を発揮しようとしていた。
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