第30話 魔玉
──男と同時に向かってきた女魔法士はフィアに向け、無数の炎の矢を降らしていた。
それを難なく躱すが周囲が炎に包まれてしまっていた。
フィアは頬を膨らませると──
「もうっ!! 何で森の中で炎魔法使うかなぁ!! バカなの? それに、私の尻尾の毛が少し焦げてるし!」
怒ったフィアは水魔法で創り上げた5本の爪を横に薙ぐと、瞬時に炎を消し去った。女が次の攻撃を放とうとフィアを探したが、さっきの場所には姿はなく、真上に移動していた!
だが、それに気づいた時にはすでに手遅れで、フィアは目つきを鋭くし魔力を練っていたのだ。
「今度はちゃんと眠るんだよぉ!」
そう言うと、体全身を水と風が包んだ。
それは左手に収束すると──
飴の力で創られた偽物の合成魔法ではない──
本物の合成魔法で氷を創り出した──
──それを女目掛けて放った!
「──
静かに言うと、女を囲む様に天空から円柱のアクア色の光が降ると、半径5メルトを瞬時に凍てつかせ、直撃した女は氷像と化していた。
白い息を吐きつつ、着地したフィアは──
「感謝してよね……。死なない程度に手加減してあげたんだから……」
静かにそう言うと、ゆっくりとアミザの方へ歩いて来ていたが──
「あのねーー!!!! フィア!! 何で【
「いやぁ。久しぶりだからさぁ……つい気合が入りすぎちゃってぇー……。ね?」
「『ね?』じゃないわよ!! 学生達が凍傷にでもなったらどうするの!?」
怒られたフィアは耳と尻尾を垂れさせ、申し訳なさそうに言った。
「……ごめんなさい……」
ちょうどその時、地上に降りて来たセンスが「まぁアミザ姉、無事だったんだからいいじゃねーか?」と言ったが、「──あのねー! センスちゃん! そのあたりはちゃんとしないとダメだから!!」と言われ、センスも「ごめんなさい……」と謝っていた。
だが、センスはすぐに辺りを見回し、学生達の無事を確認する様に口を開いた。
「赤髪の少年は無事だな……。フィア姉とアミザ姉が助けた2人も無事だな……。それに、ミスティは気絶してただけみたいだから大丈夫そうだ……。だけど、ハルアはどこだ?」
問いかけられたアークは経緯を話した。
「そんな事があったのか……。で、ハルアを追って行ったのはその狼の獣幻と兎角って事だな……。じゃあオレが行ってくるよ。フィア姉とアミザ姉は学生達をルーメルまで送ってくれ!」
「センスちゃんだけで大丈夫?」
とフィアは言ったが、センスは気にもせず──大丈夫だろ。と軽い口調で返して来た。
それを見ていたアークは、助けに来てくれたセンスとフィア、アミザに遅れながらお礼を伝えていた。
「あの、教官……それとフィアさんにアミザさん、ありがとうございました。俺たちだけじゃぁ多分無理でした……。なんかアイツら変な飴を口にした途端、魔力量が爆発的に上がって……」
その感謝に、フィアとアミザも自分達こそ申し訳ないといった感じで答えてくれた。
だが一人、アークのその言葉【飴】の発言に、出発しようとしたセンスが動きを止め、真剣な眼差しで──それ詳しく話してくれないか? と言ってきた。
アークはディゼルから微かに聞こえて来たワードを口にした──……。
「つまり、その虹色の飴は『人間の生命力を凝縮して創った』と聞こえたんだな……?」
話を一通り聞いたセンスはそう言うと、聞き覚えのない名前を口にした。
「【
アーク達はもちろん、フィアとアミザさえも聞いたことのないその名前に、最初に口を開いたのはルールウだった。
「その魔玉っていうのは魔者達が創ったものなんですよね? でもどうやって創るんですか? 奴隷として使ったりする事は知っていますが、生命力を飴にするなんて……」
質問の答えに、センスは顔を険しくして話してくれた。
「アイツらは【
その名前を聞いた瞬間、センス以外の者達は顔を強張らせ緊張していた。
このメイマ大陸の絶対的支配者である、ガーヴを倒さなければ、この大陸の人間は解放されないからである。
「まぁ、緊張する気持ちも分かるが、今のところはあっちから直接干渉してくる事は無いと思うぞ」
その軽い言い方に、今度はリメルが口を開いた。
「何でそんなこと言えるんですか? そんな魔法を生み出す事が出来る魔王なら、すぐにでも軍を率いて潰しに来ることも可能なんじゃないですか?」
「そうね……。その魔法で生命力と魂を【
続けてアミザが言った。隣でフィアも大きく頷いていた。
「確かにそうなんだが、それをしない理由が2つある──いや出来ないと言った方が正しいかな……。1つ目は、魔玉という【飴】にするには最低でも100名の人間が必要で時間が掛かる。これは以前、オレの姉貴が魔貴族を捕まえて催眠を掛けて聞き出したんだ。で、2つ目は【現最強】の男がいるからだ。今も放浪してるみたいで、何処にいるか分からんがその存在が大きいな」
「その最強の人ってどんな人なんですか?」
アークが聞いた。
「う〜ん……。オレも見た事ないからなぁ。姉貴は会った事あるみたいだけどなぁ……。なんか、【ラシエル】ていう綺麗な剣を持ってるみたいで、確か名前は【レオリス・グランディア】て言ってたぞ」
その会話の最中、ようやく目を覚ましたミスティが何かを思い出したかの様に呟いた。
「レオ……リス……さん?」
気がついたらミスティに、センスは満面の笑みで抱きついていた。
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